第2話
「・・・
「まぁ、正式には来年度からだけどね」
俺をスカウトしに来た小林という若い女性はそう答えてきた。
「一応聞きますが、女性に高校野球の監督ってできるんですか?第一、体力も身体能力も技術も男子高校生にすら及ばないし、高校野球で女子選手が公式戦に出られないってことはさすがの貴女でも知っているでしょう。それに名古屋東って高校、聞いたことないんですが」
「あら知らないの?高校野球では一応、女性の監督もいるのよ。それに私自身小学校から大学までずっと男子に混じって野球をやっていたし、技術的にも問題ないって言われたけど」
「そういう問題ではないと思います。それに第一、名古屋東って高校はどこなんですか?地元民ですけど、この学校の名は僕も知りません」
「今はまだ
「え?そうなんですか・・・」
名古屋女学院。地元では有名な中高一貫のお嬢様女子校だ。家からも割と近い距離。しかし、こんな歴史のある女子校がなんで共学に踏み切ったのか。俺がそう考えていると、小林監督から学校のパンフレットと野球部の入部案内が手渡された。
「あら、新しく校舎作るのね」
母さんが話に入ってきた。それと同時に母さんは学校のパンフレットと野球部の入部案内を見始めた。
「はい。共学化の話は数年前からあって、来年春に新校舎が完成するので、それと同時に共学化します」
「このセーラー服は変わらないのね。私が現役の頃からずっと同じよ」
「この女子の制服は学校の伝統ですので・・・男子の制服はブレザーを採用する予定です」
「スポーツクラスも作るのね」
「はい。野球部に入部予定の部員は原則スポーツクラスに入らせてもらう予定です。また、共学化に合わせて高校からの新入生募集も再開致します。まあ、男子の募集は高校だけですし、カリキュラムの関係上、中学からの内進生とは3年間別クラスになりますが」
そして母さんは野球部の入部案内を見始めた。
「野球部の練習環境は?あと寮はないの?」
「敷地が充分に確保できたので、現在、学校の敷地内にナイター設備のある専用球場と室内練習場、ブルペンを建設中です。また他部との共用ですが、合宿所とトレーニング施設も新たに建設中です。まあ、部員は原則自宅通学させる予定ですが。練習時間は平日は3時間程度。土日は朝9時から夕方5時頃までを予定しています。週1日は休みを設けたり、テスト期間中は原則部活禁止とか、いろいろあるんですけどね」
「野球漬けにはちょっと難しいけど、これなら練習環境はかなりいい方よね」
母さんがニヤリと笑った。そして、
「優太もまだ他から誘いないし、名古女に入っちゃいなよ」
「・・・そうだな」
俺は少し躊躇った。そして小林監督は、
「再来週に文化祭がありますし、来月には学校見学会があります。体験入部も行いますので、その時までじっくり考えていただければ嬉しいです」
と言って家を後にした。
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