第3話

9月半ばの土曜日、俺は名古屋女学院の文化祭に行くことになった。女子校の文化祭に行くのはもちろん初めて。そして・・・




「つーか紗奈、お前も行くのかよ」


「私、名古女受けようかって思ってるの。受かったら行くかも」


「え?そうなの?学力結構いるぞ」


「え?私の成績知らないの?1学期の期末、学年1位だよ?」




俺が名古女の文化祭に行くって言ったら、紗奈が勝手についてきたのであった。




しかし、石原紗奈という女は成績優秀なのだ。俺が学年中位をうろちょろしているのに対して、紗奈はいつも学年全体で最上位をキープしているのだ。運動に関してはダメダメで、俺に頼りっきりの紗奈ではあるが、勉強に関しては逆で、俺が紗奈に頼りっきりであるのだ。




◇ ◇ ◇




家から名古屋女学院までは、バスと地下鉄で30分ほどかかった。しかし、さすがは中高一貫の名門私立、敷地が半端なく広い。ちなみに隣には、来年春完成し、現在工事中の新校舎と野球部のグラウンドや室内練習場があった。


そして、それ以上に俺が驚いたのは女の子の数だった。来年受験予定の小学生や中学生や在学生、他校の制服を着た女子高生や卒業生であろうお姉さん方・・・と、多くの女性方がいらっしゃった。しかし、来年から共学化するのに、名古女の文化祭に訪れた男子中学生の数はごく少数だった。




文化祭の内容は、女子校の文化祭ということもあってかなり華やかだった。中高各クラスおよび、各部活動の出し物は、どれも見応えがあるものであった。その中でも、俺が特に気に入ったのは吹奏楽部の演奏とチアリーディング部のパフォーマンス披露であった。俺も来年からここのブラバンやチアに応援される・・・かもしれないということを考えるとね。


一方、紗奈が気に入った出し物は、中学2年生のクラスが出していた、コスプレ撮影会だった。これはまあ、コスプレ体験ができるというやつだ。で、チェキを使って撮影をする。撮った写真はそのまま持ち帰りだ。俺は時代劇の悪代官を、紗奈はアイドル服を希望し、撮影をする。しかし、これが大受けだった。紗奈が俺の格好を見て爆笑してる。そして・・・




「私、名古女の制服気に入った!やっぱりこの制服はみんなの憧れだったんだね!」




伝統のセーラー服として、地元では名高い名古女の制服を試着し、ご満悦な表情の紗奈。挙げ句の果てには、「インスタに載せたいから撮って」と俺に写メを要求してきた。俺も男子の制服を試着したが、結構気に入っている。ちなみに、制服の試着コーナーが開催されていた教室は被服室であったが、被服室前の廊下では各部活動の紹介がされていた。来年の共学化に合わせて、野球部の他に、サッカー部も設立するそうな。そして・・・




「あら、伊藤くん来てたの?」




文化祭が終わり、これから帰宅しようとした時、小林監督に遭遇した。

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