第5話 ねこっちとお風呂

 ねこっちはお風呂が苦手です。だけど家猫になるなら一度お風呂に入らなきゃダメなのです。ねこっちはくんちゃんに抗議します。


「くんちゃん、ねこっちはお風呂好きじゃないのです」


 でも、くんちゃんはシャワーをジャーとかけて猫用ノミ取りシャンプーでワシワシねこっちを洗います。仕方ないので、ねこっちは大人しくします。だけどやっぱり、抗議だけはするのです。


「ねこっちはお風呂はキライですー」


 ねこっちの抗議を聞いてくんちゃんが笑います。


「ねこっちは抵抗はしないけど抗議はするんだね」


 ねこっちは争いがキライなので爪をたてたり、噛み付いたりは嫌なのです。でも、自分の意見は言うべきなのです。だからお風呂の最中は隙あらばくんちゃんに抗議しました。その度にくんちゃんは笑っていました。


 お風呂からあがって、タオルで体を拭いてもらうのは特に嫌ではないので、大人しく拭かれていたのです。

 やっとお風呂が終わって、早く乾かさなきゃと体をペロペロ舐めていたら、くんちゃんが変な機械を持ってきました。それはスイッチを入れると「ブオー」と音を立てて暖かい風が出てきました。ねこっちはビックリしました。シャワーはまだ我慢できたけど、これはダメなのです! これは怖いです! 抗議しながら逃げ回るのです! くんちゃんは、ねこっちを追いかけてきます。


「ドライヤーで乾かさないと風邪ひくよー」


 でもねこっちは断固それだけは拒否なのです! 最後はくんちゃんが諦めて、ファンヒーターを入れてくれました。ねこっちはファンヒーターの前で心行くまで体を乾かしました。


 お風呂に入れられるのはキライだけど、お風呂場が暖かいことを覚えたねこっちは、翌日からくんちゃんがお風呂に入っている時は一緒にお風呂場に入って浴槽のフチでヌクヌクすることが日課になりました。時々浴槽に登る時、ジャンプに失敗してお湯の中にドボーン! と落ちることもあるけれど、その時はくんちゃんが助けてくれるし、やっぱりねこっちはくんちゃんの傍がいいのでくんちゃんがお風呂の時はねこっちもお風呂場に待機するのです。

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