死神
一瞬、死神が自分を迎えに来たのではないかと思ったが、よくよく見ると、それは刹だった。
「あれっ?もしかして刹?」
刹は顔を反らして、早くこの場を立ち去りたそうにしていた。だが、座ったまま立てない私を見かねて、大鎌をポケットサイズのキーホルダーに変換すると、いきなり私をお姫様抱っこし始めた。
「えっ…」
「ひくな。お前、もう脚パンパンで歩けないんだろ?家まで送る」
「いやいやいや…こんな状態で帰ったらやばいって、近所中の噂になるし、お父さん絶対怒る」
「そうか?」
「…取り敢えず、近くの公園で休んでから、自分の足で帰ります。」
「……はぁ、仕方ない。お前に伝えたい事もあるし、そこで少し話そう」
「伝えたい事…?」
「着いたら教える」
私は取り敢えず、刹におんぶしてもらう事にして、そのまま公園まで向かった。
昼間はいつもちびっ子達で人気な公園は、午後9時を回ったと言う事もあり、真っ暗で、寂しかった。
「どこに座る?」
「じゃあ、あそこのベンチで…」
「ああ、分かった」
刹は、私をベンチに座らせて、静かに隣に座る。そこでようやくこの状況の異常さに気づいた私は、ちょっと頭の中が混乱していた。
「遥」
「はっ!はい…」
「僕は君に、伝えなければならない真実がある」
「なっ…何を?」
「僕は、実を言うと君を狩りに来た死神なんだ。そして君は、もうすぐ死ぬ」
彼は、ゆっくりと私に視線をあわせた。私も彼の目をしっかり見た。その黒目は、確かに光がなく、どこまでも真っ黒だった。だが、私には、初めて見た時ほどの恐怖は感じなかった。逆に、この死神になら、狩られてもいいって思った。
「うん…そうかな〜って、何となく思っていたよ」
「えっ…そうなんだ」
「うん」
「…でも、君が死ぬには、一つ問題があるんだ。君は、黒猫の噂を知っているかい?」
「うん、勿論。よく話題に上がるから…なんか私と関係があるの?」
「そうか…君はまだ気づいていないんだね。」
「えっ…何に?」
「遥、落ち着いて僕の話を聞いてくれ、あの猫は…」
ギャァーーーーーー!!!
その真実が語られようとした時、近くから男の人の叫び声が聞こえて、私も刹も体がビクッとなった。だが、今日は満月だ。急いで声のする方に二人して向かった。
住宅街の道の角に、腰を抜かしているお兄さんの姿を見つけた。そして、外灯に照らされた地面に大きな猫の影が見えた。
気づくと刹はあのキーホルダーをすでに大鎌に変えて、お兄さんの前に立って敵と交戦していた。私も急いでお兄さんのもとまで行った。
お兄さんのもとに着いて視界が開けると、そこには大きな黒い猫がいて、刹に威嚇している真っ最中だった。だが、刹の後ろにいた私の姿に気づくと、少し悲しそうな顔をして、普通の猫のサイズに戻って、家と家の塀を使って逃げてしまった。
刹がそれをお追うとした。だが、私は気づけば彼の腕を掴み、「ダメっ!」と心の底から訴えていた。
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