6章 親友の願い

 一方その頃、学校では、

「怜人遅えなぁ、今日は遅刻かな〜」

もうすぐで、予鈴なるぞ。授業始まっちゃうぞ?大丈夫か、アイツ。

一応、唯一の昔馴染みのアイツを気にしている。そんな心配をしてるのは俺だけだが…………。

「怜人くん遅いね〜」

「そうだよな、珍しいなぁ〜」

「リア充は爆発すリャいいんだよ」

「そんな事を言うのはお前だけだよ、他人を恨むなよ。かっこ悪いぞ」

「お前、それでも男か?怜人の奴はいつかリアルハーレムになるかもしれないんだぞ?」

「それはないだろう、元。そんな事したら何人の敵を作るかわからないぞ?そんなのは漫画やアニメの世界だけだぞ、現実見ようぜ?」

「何言ってんだ!あいつは、自然と女性に声をかけるような奴だぞ?しかも、老若男女かかわらず、声をかけるから誰も本当の恐ろしさに気づいてないんだぞ?」


「おおっ、元。怜人のことになるとマジだな?もしやおまえ、ホモ?」

「ホモじゃねぇーよ!俺は女の子が大好きなんだ!女の子たちにハスハスしてもらいたいよ!」

「元、それはさすがにまずいだろ!」

「元、お前終わったな!」


当たり前のことだが、怜人はイケメンというほど、顔が整っているわけではないが。性格が大人しく、誰とも隔たりなく話す怜人はとても人に好かれやすい。それに、男子の優しさに弱い女の子達は次々と、怜人の虜になりつつあった。そんな、怜人には中学の時からの昔馴染がいた。それが元だ。そんな元がとても残念な人でなしだと分かれば、女子からの評価が下がるのは当たり前だ。さらに、今元は自分からボロを出してしまっていた。


「キモい!」

「死ね!」

「怜人君が汚される!」

「「「「「「「「「「上北、死ね」」」」」」」」」」」」」」


クラスの女子たちから壮絶なことをさらりと言われる元。

「気にすんなよ、元!」

「お前には、二次元があるぞ!」

「二次元なら元をいくらでも、救ってくれるぞ?」

「「「「「「「「「オタクも死ね!」」」」」」」」」」」」


(なんか女子のやつらが辛辣なのだが、そんなことは言わないほうがいいような気がするぞ。)


「だよねー。」

「何さらっと、このクラスにいるんですか、先輩?」

「元君も大変だね?最後のは言わないほうがいいのにね?」

「どうして、上北君?」

今訪ねてきたのは、教室の中でも唯一俺に話しかける女子でこのクラスの委員長でもある、南野さんだ。彼女も怜人に声をかけられた一人だが、普通に俺とも話してくれる友達の一人だ。



「それはなぁ、南野。二次元を俺に伝授したのが怜人だからだよ。当たり前の話だが、近くに重度のオタクがいたら耐性がつくのは当たり前だろ?」

「えっ、それって本当なの?」

「そうだよ。確か南野ちゃんって言ったけ、よろしくね?」

「えっ?先輩なんですか?なんでここに?」

「だって怜人君に会いたくてわざわざ教室にきたのに、来なかったから帰るんじゃ、なんか損した気分になるじゃない?」

「そうは思わない、元君?」

「俺に振らないでください、先輩。」


俺とさっきから話している先輩は、二学年上の先輩で怜人の幼馴染の浅木先輩だ。見てわかる通り、かなりの美人だが、男にはあまり興味がない。異性として見ているのは実の弟のように可愛がっている怜人のみ。俺は、ちょくちょく会う機会があったため、先輩と話すことを許されている。なかなかに業業しい言い方になってしまうが、それは仕方のないこと。なぜなら、彼女の家は日本有数の名家のお嬢様らしい。実のところは俺もよくわからないが、そんな噂をよく耳にする。

 そして、先輩に告白して散った男も数しれず。彼女の後をつけようとすれば、気絶させられ、不用意に近づこうとすれば補導される。曰く、彼女は自分の周囲に国家の犬を侍らしている女王様とも呼ばれている。

そのため、今では先輩に不用意に近づこうとする”勇者”はこの学校にはいない。しかし、街中ではよくそう言った不埒者が多いため、被害者が量産されるのが後を立たない。だからこそ、先輩と話すときは非常に緊張するのだ。はっきり言って自分から、話しかけたいとは思わない。

(……早く来てくれ〜怜人ー!)



キンコンカンコンキンコンカンコン〜

怜人が登校していないにもかかわらず、無情にも予鈴がなっていた。


「はぁ〜、結局怜君来なかった。どうしてくれるのよ、元君!」

「俺にふらないでください先輩」

(…そうだぞ怜人、この空気をどうにかしてくれよ。空気が重すぎる。)



「……………」

委員長なんて空気が重すぎて、言葉を忘れているようだ。

「はぁ、仕方ないわね。今日は帰るわ、元君」

「お疲れ様です、先輩」

「代わりに元君、今日一日私の下僕にならないかしら?」

「いいえ、結構です」

「断らなくていいのよ?ご褒美もあげるわよ?」

「遠慮します。」

「えっ、上北君。女の子に興味があるのに、先輩のお願い聞いてあげないの?」

「当たり前だよ。先輩のご褒美は大抵ロクでもないから、期待できないんだよ。」



「「「上北、死ね!」」」

今度は、今まで俺の味方をしていたはずの男子どもが裏切ってやがる。

「「「上北、爆発しろ!」」」」

「「「俺らにも、幸せをよこせ!」」」

「「「なぜ、上北ばかり!」」」

理不尽な怒りを向けられるとはなんともやるせ無い気持ちになる。


「上北君、そういえばさっきの続きを聞かせて」

「あぁ。先輩のご褒美ってのは、先輩の下僕になれることだ。」

「えっ?それの何がご褒美なの?」

「女子に相手にされない男ってのは、女子に声をかけてもらえるのは嬉しいことなんだ。しかも、可愛い女の子のそばに1日中いられるのは何よりもの、喜びなんだぞ。男にとって、これ以上の喜びは無いんだぞ!」

「妙に、力説するね?まるで、実体験みたい。」

「まぁ、俺も憧れはするが。相手が先輩なら、話は別だ!」


「そうなの?」

「あぁ、変な妄想をしよう者なら補導されるし、近付こうとすれば拳が飛んでくる」

「えぇー!先輩が殴るのー?」

「いいや違う。先輩の周りに目を光らせている”奴ら”に殴られるのさ。せめて、先輩が殴ってくれれば、違う世界が見えるかもしれないのになぁ。」

「ははははっ。元君その世界は行っちゃダメなやつだよ。それに、さっき言ってた”奴ら”って?」


「あぁーそれは……」

「元く〜ん?余計なこと言わないの。他の子が私のこと怯えた目で見てくるでしょう?私の獲物を取らないでくれるかしら?それとも、私とずっと一緒にいさせてあげようかしら?」

「ひぃー!ぜっ、絶対いやです。申し訳ありません!」

「誠意が足りないんだけど?」



(…メチャクチャ怖い。好意で委員長に教えようと思ったけどやめておこう。まだ、人生を楽しく行きたいし。他の奴らには悪いが。)



「上北君詳しく教えてよ。心配なんだけど」

「強く生きろよ!」

「えぇー、上北君のいけず〜」

誰になんと言われようと、心を変えるつもりはないぜ。すまんな委員長、犠牲は付きものだぜ。ちょっとキャラにもないことを考えてしまったぜ。

「元君〜、罰として今日一日キリキリと働いてもらうから!覚悟してね!」

「そりゃないぜ〜」

「委員長、ヘルプミイ〜」

「………」


(………このタイミングで無視するなんてひどいぜ。さっき、雑な応答をしたせいで自分に返ってきたぜ。なんてこった。さっき、先輩が俺を連れて行くとか言ってたけど、俺はついていくわけないぜ。進んで地獄に行きたくないのと同じ心境だぜ。)



とその時、突然の浮遊感に襲われた。

「なんだ?」

いつの間にか、俺の両隣に黒服の厳つい人たちがいるんだけど。

「えっ、何々?」

驚いている間に両腕をしっかりホールドされちゃったよ。俺、今から授業があるんだけど。ヤベェー、このままだと先輩のいうとおり、強制的にお持ち返されちゃうよ。

「皆様、お騒がせしました。御機嫌よう〜」

「ちょっ!誰か助けてぇ〜!」

俺が先輩の後ろに控えるボディガードっぽい人に連行されて行くのを、さっきまで話をしていたクラスメートたちは誰も目を合わせようとさえしてくれない。委員長なんか、オロオロしながら目線を送ってくるが、そんなことよりも助けてほしい。


……みんな薄情すぎじゃなかろうか。みんな揃って、関係ないアピールはさすがに傷つくんだが。怜人の奴が来たら絶対同じ目に合わしてやりたいぜ。






次回は、兄義妹のラブラブシーンに突入。早くも年齢制限有りになりそうな展開を考えております。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る