第2話 『では、今から私がお前のマスターだ』
「お~い、エリン~シルバ~どこだ~? 何か見つかったか~?」
この声はジェイか、この魔剣の事を話せばベデワルの奴に報告されて回収されてしまうだけだな……どうするか。
せっかくこんな面白い物を手に入れたんだ、もっとこれを調べたいし……よし――。
「――お、エリン、こんな所にいたのか。どうだ~? 何があったか? 俺の方は何もなくてハズレだったぜ」
「……私の方も特に何もなかったよ。ここは武器庫みたいだが、見ての通り……まったく手入れがされてなくてなまくらな物ばかりだったよ」
「うわっなんだこれ!? 手入れどころか悪魔達は整理整頓って言葉を知らんのか? ぐっちゃぐちゃじゃないか」
まぁこれは魔剣を隠すために私が散らかしたんだがな。
「――本当にね……シルバの方は何か見つけたかもしれないし、探しましょうか」
とりあえずジェイに魔剣の魔力を感じられない様にここから離れさせないと。
「おう、そうだな」
後であの魔剣を回収する為に天界から抜け出す方法を考えないといけないな……。
※
「お~い、シルバ~何処だ~?」
シルバは一体どこに行ったのだろうか、どこかで寝てるんじゃないでしょうね……あの娘ならありえそう……。
「2人とも~ここですよ~」
「お、あそこで手をふってるぞ」
いたいた、どうやら起きてた様だ。
「って、何だこの部屋は!?」
「これは――」
ここは小奇麗で装飾された家具が置いてある……明らかに他の部屋と違う、もしかしてジュラージが使っていたんじゃ……だとするとまずい、あの魔剣に関する資料がある可能性も。
「で、どうだったんだ? この部屋から何か見つかったか?」
「いいえ~それが何も~……どうやら2人のその顔を見ると~収穫なしみたいだね~」
良かった、どうやらあの魔剣といった資料類はなかったようだな。
「なんだよ、他と違う部屋だから特別な物があると思ったのによ」
「私もそう思ったんだけどね~ただ豪華な家具が置いてあるだけだったよ~その中には何一つ物が入ってなかったわ~」
何も入っていなかった? それはそれで不自然だな、もしかしてここを捨ててたって事なのか? だとすれば何故あの魔剣が置きっぱなしに? う~ん……駄目だ悪魔の考える事はわからん。
まぁいい、他に何もないのならばここからさっさと出るだけだ。
「2人とも何も見つからなかったけど、この場所は制圧したしベデワル隊長と合流しましょうか」
「そうだな、何か面白いもんあると思ったんだけどな。あ~あ、時間の無駄だったな」
「そうですね~」
※
「そうか、隠れ家には下級悪魔がいただけで他には何もなかったか」
「はい、ベデワル隊長」
本当はあったけどね。
「この周辺も何もなかったし……よし、帰還するぞ」
《はっ!》
さてさて、天界に帰った後に外に出る言い訳を考えなければな。
※
「門番、お疲れ様です」
「ん? エリンじゃないか、どうしたこんな夜更けに?」
「ええ、ジュラージについて極秘に調べないといけなくなりました。申し訳ないのですが他の者には内緒で通してもらえますか?」
やはりベタだが外に出るにはこれしかないよな。
「ベデワル隊長の命令か? 相変わらず人使い荒いな~。――分かった、気を付けてな」
ありがたいとはいえこうも簡単に門を開くとは、それでいいのか門番……。
っと、こんな所で時間をかけてる場合じゃない誰かに見つかる前に早く行かねば。
※
しかし、魔剣を調べるだけでまたこの場所に来る羽目になるとは。
だが今までに見た事がない魔剣、それに今は一人、物によっては回収すればいいしこのくらい安いものか。
「――また会いましたね、えーと……アブソーヘイズ、だったか?」
『はい、私に何か御用でございますか?』
それ以外何があるというんだ。
「そうでなければこんな所に来ない、お前の事で色々聞きたい」
『そうですか、私で答えられる範囲であれば何でもどうぞ』
ふむ、どうやら自分の事についてジュラージに口止めをされているというわけでもないみたいだな。
「では、お前の性能について答えろ」
『私の能力は他人の魔力を吸収し、その魔力をマスターに送る事が出来ます』
「魔力吸収と供給……か」
なるほど。性能的にはかなり物だ、その能力なら私の固有魔法と非常に愛称がいい。
「では何故あんな所に?」
意思を持ち魔力を吸収し供給する、そんな物がこんな所にあるのがおかしい。
きっと何か理由があるに違いない。
『それはですね、ジュラージ様は私を失敗作と判断し破棄しました』
なるほ……ん? 待て、今おかしな事を言わなかったか?
「……何だって?」
『ですから、ジュラージ様は私を失敗作と判断し破棄しました』
お前って失敗作だったのかよ!? 通りで資料も何もかもないはずだ!!
『頭を抱えてますがどうかしましたか? 頭痛ですか?』
頭痛もするわ! 置きっぱなしなっていた理由がそんな事だったんだからな!
「……ちなみにその失敗の部分は何なんだ?」
『それが私にも分かりません……試験中は常に身に付けておられたのですが……』
常に身に付けるほどの物だったのに捨てた? ますます悪魔って考えてる事がわからん。
とは言ってもこの魔剣の能力はおしいよな。
「ちなみにそのマスター権限はどうなっているんだ?」
『現在は居りません』
「……では、その権限を私にする事は?」
『可能でございます』
「そうか……では、今から私がお前のマスターだ」
どうせこいつは失敗作なんだ、色々と試してからこいつの処分を考えるとしよう。
『了解です、マイマスター』
ふむ、握った感じは……特に普通の剣と変わらんな。どうにか試し斬りを――。
「――――」
ん? 外から話し声が聞こえるな。
※
「中ハドウダッタ?」
「ドウヤラ天使共ニ襲撃サレタトイウノハ本当ダッタヨウダ、全員ヤラレテイタ」
「ソウカ」
なんというグッドタイミング、下級悪魔が2匹が様子を見にここに来るなんて。
「アブソーヘイズ、準備は良いか?」
『何時でもいけます』
さぁ、お前の力見せてもらうぞ!
※
『お見事な剣さばきですね』
「それはどうも……それよりも魔力吸収の方は?」
『出来ております、今マスターに魔力を送ります』
おお……これが魔力供給!! 素晴らしい、魔力が私の体の中にどんどん流れて――。
「お、いたいた。まさかこんな所にいるとは思いもしなかったぞ」
――くるっ!?
え……? この声は――。
「……ジェ、イ? ……何故、ここに?」
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