第7話 『我輩も言いたかったな~』
「いやまて! 我輩はそんなの話聞いててててててて!!」
こいつううううううう今度は思いっきり足の甲を踏みやがった!
「必ずや勇者デールと共に魔王を討ち滅ぼします!」
「うむ、頼んだぞ、旅に必要なものや武器防具は用意させてある……デーヴァン、後は任せたぞ」
ライリーは王座から立ち上がって広間の出入り口に向かって歩き始めた、騎士達も隊列を組みライリーのあとに続く。相変わらず統率が取れているな……ってベルトラの奴もその列に戻ろうとしてるし、まだ聞きたいことがあるのにだ。
「おい! まて! どいうことだ!?」
ベルトラの両肩を掴み上下に揺さぶる、と両肩の手を弾いたと同時にくりっとした目が三日月状につりあがり我輩を睨みつけてきた……う、なんか怖い。
「どうもこうも私はあなた一緒に同行します、ものすごく不本意ではありますが!」
不本意ならついてこなくてもいいのではないか、これだから人間の考えることはわからん……。あ、そうかこれを口実に3人での旅を取りやめにすればいいではないか。
「いやなのなら別に――」
「どうしても私はあなたについて行かねばならぬのです、ものすごく不本意ではありますが!」
大事なことなので2回言われた。まずいこのままではたった3人で行くはめになってしまう、どうにかしないと!!
あああ、考えてる間にもライリーはもう出入り口付近まで歩いてしまっているし。
「えーと……えーと……なにかなにか……そうだ! ――王様! 我輩は剣など触った事もありません! ど素人です! しかも我輩、体が弱く――」
こんな弱い発言、自分で言ってて悲しくる……だがライリーの歩みを止めれることには成功したぞ。
「何言ってるの? アブソーヘイズを触ってるじゃん」
が横にいた精霊が首をかしげて天使の剣を指を刺してくる。
こいつはまたしても余計な事を言う!!
「持つほうの触れるではない! 剣を振るのほうだ! ほれこのとおり!」
天使の剣を鞘から抜き適当に振り回す。子供が木の枝を振り回す様にめちゃくちゃに、あ~実にかっこ悪い。
「あ~なるほど~けど大丈夫だと思うよ?」
ポンっと手を叩くと精霊は光の粒状になり天使の剣の鍔にある虹色に光る丸石に吸い込まれるように入っていく。
「は? 精霊?」
『アブソーヘイズとデールは繋がっているって言ったでしょ? それはこうやってデールに魔力を送るためだよ、その魔力で身体能力を向上したり魔法が強化できたりできるし』
天使の剣から精霊の声が聞こえてくる、確かに魔力が天使の剣から我輩に流れて込んでくる。
『そしてなにより!』
「なにより?」
『このエリンちゃんがいるから一万光年力!!!』
うん、こいつは馬鹿だ、断言できる。
「……それ距離だ……」
天使の剣にこんな余計な能力が付いているとは……。
『ほへ? まぁ別にそんな細かい事――』
天使の剣から光の粒状が飛び出し人の形に集まり精霊の姿に戻る。
「――どうでもいいじゃない~」
どうでも良くないと思うが……ん? 今のやり取りを見てなのかライリーがものすごい不安な顔をしているぞ。これはチャンス!
「王様! 見てのとお――」
《フハハハハハ!!》
今度はなんだ! どうして我輩の邪魔ばかり入るのだ!
「何事だ!?」
騎士達はライリーを囲みデーヴァンは鋭い目で辺りを見渡ている、あれでは話が進められんではないか。
「忌々しい! 今のはなんなのだ!?」
「なんか外から声きこえたねぇ~」
広間に兵士が走りこんで来た、なんだかすごく慌ててるな。
「たっ大変です! 空を!」
「空だと!?」
広間にいた者たちがベランダへと走り、空を見上げている。一体なにがあるという――。
「なんだあれは!?」
「はぁ!?」
空には我輩が良く知るイケメンが映りだされている。漆黒のマントがより肉体美を上げ、チャームポイントのサメのようなギザギザの歯は、2本の角に腰くらいまで伸びたやっぱり気になるぼさぼさの黒髪……それこそ――。
「なんで我輩が空に!?」
《人間共よ、お初にお目にかかる余の名はデイルワッツ! 魔王デイルワッツである!》
「あ、あれが魔王デイルワッツ!? 直接乗り込んできたのか!?」
「ん~違うね、あれは魔法で作った幻で自分の姿を空に映してるんだよ、本体は遠くにいると思うよ」
いやいやいやいやデイルワッツは我輩だ!! あれは一体誰なのだ!?
《天使の剣を抜いた者が現れたと聞いてな、我々には取るに足らない事だが……そうまでして抵抗するのであればこれより本格的に総攻撃を仕掛ける!》
「「なんだと!? 今までは本気ではなかったというのか!?」」
ベルトラが我輩と同じ言葉を言ったから何でこんな奴と~って顔しとるが、意味がまったく違うぞ……アルフレドの報告では全力の様に侵攻してるとのことだったのにどういうことなのだ?
《人間共よ、恐れよ! 我が軍団の力に!! フハハハハハハ!!!》
笑いとともにもう一人の我輩は消えていった。
「我輩も言いたかったな~あんな台詞……」
ポツリと独り言、幸い他の者達はあのデイルワッツ? の衝撃が大きかったのか我輩の独り言謎聞いてる者なぞいなかった。
「陛下、魔王軍も動き出すのなら我々も早々に動かなければ」
あ、そうだ。3人旅という問題はまったく解決してないではないか!
「あ、いや! だから我輩は!」
ベルトラは我輩の胸倉を掴みものすごい剣幕で囃し立ててくる、だからその目は怖いんだって。
「奴らは今より攻撃をしてくるんですよ! そうなると少しでも守備に人手が必要になります、最初の予定通り少数精鋭として動きましょう! 大丈夫です、剣のことなら私が指南できますので!」
我輩を投げ捨てベルトラはライリーの元へ駆け寄り進言を促す。
「陛下! どうか!」
髭をさすりながらライリーは目を瞑り考える、ほんの数秒の沈黙……頼む、少数なんてやめてくれ!
ライリーは目を開け我が達3人を再度確認するように目を配らせた、答えが出たようだ。
「いささか不安ではあるがベルトラがいれば問題なかろう、すぐに準備だ!」
「はっ!」
「――――――――――――」
城の者は走って城の中に入っていく、ベランダには我輩と精霊の二人だけ。
「――――――――――――」
「デール、だいじょうぶ?」
ツンツンと精霊は我輩のほっぺをつっついてきたがショックが大きいせいか何も感じない……。
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