第1話 『我輩が直々に』
この世界は三つある。
人間共が住む世界、人間界【ディネッシュ】
天使共が住む世界、天界【エバンス】
そして我輩たち魔族が住む世界、魔界【バハドゥール】
血の様な赤い月が照らす赤く染まった壮大な大地にきりだった山々が実に美しい魔界。その美しい大地の中央には大きな山を削って作らせた城、これが我輩のマイホームだ!
王座の間に我輩専用に作られた立派な椅子、これに座るのは実に気分がいい。
身長は2m近くにこの素晴らしい筋肉、この漆黒のマントがより我輩の肉体美を上げている。
サメのようなギザギザの歯は我輩のチャームポイント、2本の角に腰くらいまで伸びたぼさぼさの黒髪が気になるとこだが鬼族の血筋が混じってるのでこればかりはどうしようもない。
我輩の名は魔王デイルワッツ、様々な種族が混濁する魔界を統一した悪魔。
「アルフレド、人間界の侵攻具合はどうなっている?」
アルフレドは身長は150cm前後くらいの小太りの悪魔、肌が赤くとがった耳をピンと立てつるっぱげ、その頭をさすりながら怯えたように報告をしてくる、こんなだが我輩の魔界統一に抵抗してていた者の一人で我輩に下り今は側近の悪魔元帥として働いている。
「はい、我が軍の四天王を中心に着々と侵攻しています。ただ一部で天使の作り出した結界石のせいで我々魔族が入れず手が出せないところもございますが」
結界石、天使共が我輩たち魔族が入れない結界を張る作られた物……人間界にそんな物があるのかさっぱりわからん。
「その忌々しい天使共の巣である天界の動きはどうか?」
「天界は強度な結界を維持のまま、沈黙を保っています」
アルフレドの横にいたアナネットが答えた。
アナネットは女悪魔でアフレドと同じ悪魔元帥、身長は170cmくらいでやや高く所々破れた白のローブに身を包みフードを深々と被っているため顔がよく見えない、長い付き合いの我輩でも一度も見たことはない、我輩が幼い頃に出会い今まで様々な事をサポートをしてきた優秀な部下だが時折フードの隙間から除かせる赤い目が実は苦手だ。
「やはり動かずか……500年前の魔天戦争様々だな! 魔界は我輩の手に!! そして今は人間界をも手にしようとしているのだからな! チョッハハハハハハ――」
魔天戦争、悪魔と天使との戦争で我輩がこの世に生まれた時にはもう終戦に近い状態だった。
その戦いで力のある悪魔と天使はくたばり魔界のパワーバランスが崩れ、天界も力のある奴が統一してたのか逃げるように結界を張り引きこもった、そのおかげで力をつけた我輩は楽に魔界を統一できたというわけだ。
思い出すだけで実に気分がいい、笑いが止まらない。
「ですが人間界である儀式が行われるそうです」
「――ハハハハ……ハ?」
アナネットの一言で我輩のいい気分が一瞬で冷めてしまったではないか。
「ある儀式だと?」
「『天使の剣を抜いたものが勇者となり魔王を討つべし』、どうやら天使共が天界に結界を張る前に人間に剣と結界石を渡したと思われます。そしてその剣を抜く儀式が近々行うとの事です」
なるほど、それが人間界に結界石がある理由か、引きこもる前に手は打っていたということかやはり忌々しい天使共だ。
「それと確証がなかったため今この時のご報告になる事をお許しください。先日、ある実験を行い成功させ結界石の中に入る方法はございました。」
アナネットにしては珍しい、いつもなら先に断りをしてくるのに今回は事後報告とは、まぁアナネットに何か考えがあるのだろう。
「よいよい、姿が見えん時もあるとは思っていたが――してその方法とは?」
我輩は心が広い、いい報告なれば許してやるのも王の役目だ。
「ありがとうございます、方法は私めの固有魔法である死霊術でございま――」
「死霊術だと!? それではゾンビになるだけで結界石の中には入れない……ヒィ!」
言葉をさえぎるようにアルフレドが叫び、それをアナネットがフードの隙間から赤い目で睨み付けてる。
ヘビに睨まれたカエルのごとくアルフレドは固まってしまったおるな……わかるぞ、我輩もその目で睨まれるのは何故か引いてしまう、それがアナネットの赤い目が苦手の理由の一つかもしれん。
「アルフレド、最後まで私の話を聞け、確かに普通の死霊術ではゾンビになってしまいます。ですが研究を進め人間が生きている時に悪魔の魂入れその体を乗っ取る、それなれば生きた人間とし――」
「なるほど! 悪魔の体では無理でも人間の体ならば結界石の中に入れるということか!! いや待て二つの魂を1つの体、ましてや人間の体にそんなこピョッ!?」
「ア~ル~フ~レ~ド~最後まで聞けんのか貴様は!!」
アルフレドを思いっきり睨み付けてやると今にも倒れそうになる、が堪えられるあたり悪魔元帥は伊達じゃないな……しかし、こいつはいつもいつも話の間に割って入るのは悪い癖だ。
「はぁ~では話を戻しますが、細かく説明すると邪魔が入りそうなので簡潔に、確かに二つの魂が入ると負担が掛かります。ですが悪魔の魂に魔力を混ぜれば脆弱な人間の魂は消滅、そのまま人間の体を乗っ取れるということになります。後残った悪魔の体は魔界からあふれ続ける魔力のおかげで仮死状態になり、そのため元の悪魔の体に戻せることも確認済みでございます」
「素晴らしい!! 今すぐにその方法で侵略を進めるのだ!! ――ん? どうしたのだ?」
褒め称えたのに何故アナネットは戸惑った顔を見せて(ちゃんとは見えんが長い付き合いでなんとなくわかる)きたのだ?
「恐れながら、今すぐに人間の体を大量に捕獲することは難しく……実験のために捕虜してある人間からでも健康的な者だと10人くらいが限界、しかも攻め込ませる悪魔の選別も――」
なるほど、確かにそうだ我輩でも今すぐ大量の人間を、しかも無傷で捕まえるのは難しいし知能が高い悪魔も多くはない、血を見たら暴れる者が多いしな。
しかし我輩に抜かりはない、一瞬でどっちも解決できる作戦を思いついたのだからな!
「なに人間も悪魔も1人でかまわん」
「と申しますと?」
さすがのアナネットも我輩の考えがわからず赤い目を白黒させているな、ここはビシッと決めてかっこよくきめてくれるわ!
「我輩が直々に天使の剣の破壊とその抜いた者を始末してくれよう!! 人間共に絶望の味をあわせてくれるわ!! チョッハハハハハハ!!」
「はいぃぃぃぃぃぃぃ!?」
――まさに完璧!! さすが我輩!! これならば何の問題もない!!
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