昔使っていたお人形


 大掃除をしていた時に、とても懐かしいものを見つけた。

 まだ幼稚園生だった頃ずっと一緒で、いつも持ち歩いていた大好きなお人形。

 おばあちゃんがくれたフランス人形だから、古い家にありそうなデザインだ。


 今思うと可愛いと言うよりも怖いけど、当時は本当に大好きだった。

 大好きだったけど、いつの間にか他のものに興味がいってしまい、押し入れの奥の奥にしまわれることになってしまった。


 だから取り出した人形は、ボロボロで汚れていた。

 私は指の先でつまんで持ち上げながら、顔をしかめる。


「何これ。汚ったないし、くっさ……どうして、こんなのとっておいたのよ」


 そしてそのまま、ゴミ袋の中へ勢いよく捨てた。

 明日はゴミ収集の日だから、ちょうど良かった。

 そのまま袋の口をきっちりと縛って、私は明日に備えて寝ることにする。



 その夜、私は妙な苦しさを感じて起きた。

 急にどうしたのだと恐怖にかられたけど、確かめてみれば飼っている猫がのっていただけ。


 次の日、ゴミ袋を捨てた時も何も無かった。

 私はゴミ収集車を見送りながら、ガッカリとする。


 これで呪いとかが起きたら、面白かったのに。

 非日常を体験できると期待していたのが、馬鹿みたいだ。

 私は大きくため息をついて、その場から離れた。

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