想像の中で

 僕は、想像の世界に行くのか好きだ。

 そこではどんな事も出来て、何をするにも自由だった。

 だから僕は、時間があれば想像をしていた。


 そんな僕に対して、周りは色々と言ってくる。

「根暗」「気持ち悪い」「何を考えているのか分からない」「頭がおかしい」

 そのどれもが毎日にように言われているけど、全く気にならなかった。

 むしろ、想像を邪魔されないからありがたい。

 そういうわけで僕は、誰にも邪魔されずに自分の為に時間を使った。


 想像の中に浸っていれば、何も見えなくて済む。

 辛い事や、現実、面倒な事、何もかも。

 まあ、見えなくなったところで、消えてなくなるわけじゃないのだけれど。


「ああ、ずっと想像の中にいられたらな……このまま、ずっとずっと」


 最近は、いつもそう思ってしまう。

 この世界に未練なんてないし、生きていても仕方がない。


 それならいっそ、このまま本当に想像の世界に生きようか。

 僕は、そう決意した。

 だから想像の世界に入って、好きな事を好きなようにする。


 そうすればストレスからも解放されて、何だか楽しくなってしまった。

 想像の中で、たくさんの事をした。

 今までストレスだと思っていた事を、全部全部解決した。


 でも大丈夫。

 これは全部、想像の中の世界なのだから。





「だから、僕は悪くないんですよ。想像でやった事ですから」


 そう言って、少年は笑った。

 その顔からは、連続殺人鬼の恐ろしさは感じられない。


「あはは。何でそんな顔をするんですか。これも想像なんだから、早く家に帰らせてよ」


 彼は家族も、クラスメイトも、全く関係のない人も、みんなみんな殺した。

 そしてすぐに捕まり、取り調べを受けているのだが。

 取り調べをした刑事は、何と言えばいいのか分からなかった。


 狂っている。

 そんな言葉で片付けてしまっていのか。


 彼の行動はやりすぎた。

 しかし、その思考回路は誰にでも起こりうるものかもしれない。

 現実と想像の区別がついているのか。

 はっきりと断言できる根拠なんて、どこにも無いのだから。

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