提示された特殊設定に対してある一つの発想ができれば、事件の全容をするすると解き明かすことができる、三手詰めの詰将棋のような連作短編集です。
第1話のクオリティが特に高い。「無意識」という、現実においてそれを意識することがない点で、ある意味では存在自体ファンタジーな概念。それがさらに「存在しない」という形で与えられる、「無無意識」という特殊設定。
頭痛が痛くなりそうな設定が、真相にたどり着いたとき、どこか日常の中にあったような気さえする身近さを持っている。
全体を通しては、ともすれば単純といえる部分もありながら、丁寧に可能性を拾っていくロジックと魅力的なキャラクターたちが決して退屈にさせない。
なにより、特殊設定を飾りにせずに必ずミステリの根幹に据える、そんなこだわりを感じる良い作品でした。