僕を脅迫状を送った犯人だと疑ってる町へやって来たのに、町を襲う巨大鮫をワンパンしてしまって英雄扱いされてしまった件
7月28日、晴れ。
今日はめんどくさい仕事だ。やれやれ、民衆の皆様がどうやら僕たち転生人に疑いの目をかけているらしい。なんでも町への脅迫状を出したとかなんとか。困ったなぁ。
んで、その被害を受けた港町、『アカプル』に一番近い所に住んでいた僕が調査しなければならないんだと。はぁ、めんどくさい。
ホワイトグリーンに頼んでワープしてアカプルに来た。ミカエルやグリムも無理やり付いてきた。港町に行くのだから何か買っていこうという魂胆だ。それで荷物持ちは僕。はぁ、やれやれ。
あぁ、これか。これが例の荒れ果てた地か。なるほど、確かにこれほど地形が変わるほどの惨状を作り出すなんて、一般冒険者や雑魚の魔物では無理だな。転生人を疑うのも無理はない。やれやれ。
アカプルのHQに着いた。海が近い町特有の生臭い匂いがするが、我慢しよう。冒険者は僕たちの姿を見て驚いている。まさか僕が来るとは思わなかったかな? 僕も来たくなかったつーの。
「ガブリールさん、お疲れ様です。すみませんわざわざお越しいただいて」
受付嬢の子が迎えてくれる。けっこう可愛い子だな。おっと、へへ。可愛い子に気を取られるとミカエルやグリムに怒られちまう。僕が浮気しないか二人共じっと見張ってる。可愛いやつらめ。
「それで、僕は何をした方がいいのかな」
「はい、ガブリールさんには脅迫状を送り付けた者の特定と警護をお願いしたいと思いお呼びしました」
「特定って言われてもなぁ······。なんかヒントないの?」
「あの破壊の惨状はご覧になりましたか?」
「うん」
「あれ程のことができる者に心当たりはございませんでしょうか。転生人でも魔王でも」
うーん、心当たりって言われても。ブレーンに聞いてみるか。
《
「ガブリールさん、何か目の前に黄緑の薄い板のような物がが出てきましたけど······。魔力?」
あ、不思議がってる。そりゃこんな田舎町では見る機会もないか。転生人もいないわけだし。
「これ? これは超一級品の魔具だよ。え、知らない?」
「すみません、勉強不足で······」
「気にすることないよ。これは選ばれた者しか持つことが許されないのだから。これは魔力によって作られているパネルでね。ほら、ここをスクロールすると色んな人の顔が出るだろ? で、この顔にタップすると」
「ブレーンさんとの会話を開始します」
機械的な声が案内してくれる。
冒険者たちも珍しがって見に来た。それほど珍しいかなこれ。そっか、この世界には無線通信とかネットとかの概念ないもんね。しょうがないや。
「なんだ」
パネルからブレーンの声が聞こえる。誰も居ない所から本人の声が聞こえるため冒険者たちはひどく驚いている。笑っちゃ悪いかな。
「僕だよ僕、ガブリール・フォートンハルト」
「何の用だと聞いている。何もないなら切るぞ」
ブレーンは今日も機嫌が悪いな。やっぱ僕は昭和生まれのおっさんの相手は無理だな。やれ根性だのやれゆとりは駄目な奴らだとか。ほんとやだ。ま、今は関係ないけど。ま、ブレーンより僕の方が強いけど。
「今さ、アカプルに来てるんだけどさ。脅迫状が送り付けられたらしくてね。んで、その町の近くの地形が破壊されまくってね。んで、それが転生人の仕業じゃないかって疑われててね。んで」
「お前な、きちんと要件をまとめてから話せ。聞き取りづらい日本語使うな」
はぁぁぁぁ? 意味わかんねーし。僕の日本語が聞きづらい? そっちの読解力がないんじゃないんですか? これだからおっさんは嫌いだ。ほんと嫌い。IQ200の僕に語彙力ないわけないじゃん。そもそも語彙力とかいらねーし。
すると、無礼なブレーンに対しミカエルとグリムが反論した。
「おい、ブレーン! お前、最弱の転生人のくせに生意気言うなよ」
「そうよ。ガブリール様の素晴らしきお話を最後まで聞きなさいよ!」
おいおい、僕のためにそんな悪口言うなって。いくら僕を貶されるのが許せないからって女の子が暴言を吐くのは駄目だろ。やれやれ。でも······ありがとう。チュッ。僕は二人の頬にキスをしてなんとか怒りを抑えさえた。二人共顔を真っ赤にして黙った。
「ちっ、いつものガキンちょたちも一緒かよ。おいガブリール。本当に切っていいか?」
「まってよ。僕の話を聞いて。僕が聞きたいのは破壊に特化してる能力を持ってる奴は知らないかってこと!」
「破壊······か。けっこうな数がいるが、お前の付近にいるのはグリザリードぐらいだな。だが奴は――」
「おっけ。グリザリード君ね。ありがと。じゃね」
「おい話を――」
ふふん。何か言ってたみたいだけどちょっとした仕返しで切ってやったぜ。ミカエルとグリムの二人もくすくすも笑っている。
「てことで第一容疑者はグリザリード君だって」
「さすがガブリールさん。聡明でございますね」
「そう? 別にこれぐらい普通じゃない?」
「では早速――」
ドゴオオオオオオン!!!
ザバアアアアアン!!!
キャアアアアアア!!!
なんだ? 外から何か大きな音と悲鳴が聞こえたぞ? もしかしてグリザリードか?
「きゃっ」
受付嬢ちゃんも怯えてる。可愛い。おっとっと、他の子よりもこいつらだな。この二人ももう子供じゃないんだからこんな大きな音ぐらいで僕に抱きつかないで欲しいな。
「ガブリール······」
「大丈夫かな······」
「大丈夫だよ。僕がいる。チュッ」
おでこにキスをしたら笑顔になってくれた。
カランカラーン
HQに誰かが入ってきた。すごい息切れしている。うわ、チャラ男だ。頭悪そー。近寄りたくないなー。田舎にもチャラ男っているんだなー。
「た、大変だ! でかいモンスターが攻めてきた!」
「モンスターですか。それはどのような姿でしょう」
受付嬢ちゃんが相手をしている。仕事モードになったらかっこいいなぁ。
「港をでっかい鮫が襲ってきたんだよ」
「巨大な鮫······。ギガシャークですかね。でも変ですね、ギガシャークは沖合に設置されている結界で来られないはずなのに······」
ギガシャークという言葉を聞いて屈強な冒険者たちが震え上がった。よほど海の男たちからは恐れられている存在らしい。
「とにかく早くしてくれ! このままじゃ漁師の皆が食われちまう!」
「でもよ、俺たちに倒せるかどうか」
「ギガシャークなんて······」
「命を捨てる覚悟か······」
情けないなぁ。僕よりも屈強な身体を持っているというのに鮫一匹に怖がるなんて。やれやれ、僕が人肌脱いで上げるか。
「僕が行くよ」
「あぁ? 誰だよお前。お前みたいなヒョロヒョロに倒せるわけないだろ!」
どうやらチャラ男は僕のことを知らないみたいだ。最強の転生人、『ガブリール・フォートンハルト』の存在を。
「大丈夫だよ。僕は転生人なんだ。簡単に倒してくるよ」
「転生人······だと······?」
ふっ。僕が転生人だと分かると急に黙っちゃって。結局チャラ男は馬鹿なんだな。やはりうぇいより僕みたいなオタクの方が強いんだよね。
僕は例の港に向かった。
♢
「ギャオオオオオオ!」
「暴れてんな。早く倒さないとやばいなー」
めちゃくちゃ大きな鮫がいた。バスと同じぐらいでかいかも。でも所詮は水から出られない魚。僕の敵じゃないね。みんな、僕の勇姿を見ようとギャラリーがたくさんいた。あんま見られると恥ずかしいんだけど、転生人たがらしょうがないよね。
「ギャオオオオオオ!」
「うるさいな」
鮫が近づいてきた。僕を食べようとしているのだろう。魚だと言うのに海から飛び出してきた。すごいジャンプ力だ。
「ギャオオオオオオ!」
「うるさいって······言ってんだろ!」
――凍れ。
《Freezing&Burning》
ピキピキピキピキ!
ガキィーン!
鮫は完全に海から飛び出して来る前に完全に凍りついた。凍らせやすい海にいるなんて僕に凍らせて欲しいって言ってるもんだ。
「うおおおお!」
「すげえええ!」
「かっこいいい!」
「さすがガブリールだ!」
おいおい、まだ倒してないのに歓声を上げるなよ。
ピキピキピキピキ!
バッキィーン!
やはり倒せてなかったか。氷を自分で内側から割ってみせた。だけどそれぐらいで僕が鮫を倒せないと思ってるのかな?
「ギャオオオオオオ!」
「転生人舐めんなよ?」
――燃え尽きろ。
ゴオオオオオオオオ!
鮫は炎を上げて燃え尽きた。僕が凍らせるだけかと思ったら大間違いだ。僕のチート
どうやらこの町の英雄になってしまったらしい。
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