最終章

第195話【第一王女の終わり】

王国首都シュタウフェン。

大王城にて酒杯を前に俯くヘレン。

彼女は今は亡き母の言葉を思い出していた。


――――――――――――――――――――――――――


「良いですかヘレン、 優雅に居なさい」


母が自分に遺した言葉である。


「お母さま、 何で優雅で居なくちゃいけないの?

私もみんなと同じようにいたいよ」


子供のヘレンは母にそう尋ねた。


「王位はクリストファーが継ぎます、 貴女はきっと何処かに嫁ぐでしょう」

「カッコいいお婿さんが欲しいな」

「えぇ、 きっとお父様が用意してくれるでしょう」

「お母さまは用意してくれないの?」

「私は・・・体が弱いから貴女が大人になるまで生きてはいないでしょう」

「悲しい事言わないで」

「貴女は優しい子ね・・・」


幼きヘレンの頭を撫でる母。


「だけども貴女はこの国の第一王女、 立派に胸を張って生きなさい」

「はい・・・」


――――――――――――――――――――――――――


母の言葉通り優雅で居ようと常に自信を持って行動していた。

プライドが高いと言われる事も有るが

誰にでも素晴らしい人間と言う者は存在しないと思っている。


シモンからの定期連絡が途絶えたと言う事はシモンは殺されたと言う事。

つまりフォースタスの暗殺には失敗したと言う事だ。

そしてシモンとヘレンは手を結んでいる。

即ちヘレンがフォースタスを殺そうとしたと言う事になるのだ。

即ち・・・


「・・・・・ふっ」


酒杯を持つ手が震え、 ヘレンは自嘲気味に軽く笑った。


「最期位泣こうかなと思ったけど涙が出ないわね・・・」


ヘレンは酒杯を煽った。






「陛下、 お休みの所失礼します」

「如何した?」


フォースタスがゴーチエ大公の城跡地に陣を構えていると兵が報告に来た。


「ヘレン第一王女が自ら毒酒を煽ってお亡くなりになられたそうです」

「自ら死を選ぶか、 何とも雅な奴よ」

「ヘレン王女はシモンと共謀して陛下を亡き者にしようとした疑いが有りますが・・・」

「ヘレンを逆賊としてではなく突然の病死と発表し国葬をする

無論、 現状は国が大変な事になっているので落ち着いたらと言う話だが」

「分かりました」

「それから酒杯を二杯持ってこい」

「かしこ参りました」


兵が下がり、 酒杯が二杯やって来る。

フォースタスはその内の一つを置いて、 乾杯をするともう一杯を飲み干した。

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