第194話【耳を疑う】

ドナウエッシンゲンのゾルゲの執務室。

話を終えたヴァーグナー。


「と言う訳でファウストが蘇りを望む事はあり得ない」

「・・・・・マジか」

「処刑の前日にファウストの元に行って確認を取った、 間違いない」

「・・・・・」


悲痛な顔をする女性陣。


「・・・私、 そんな事知らなかった、 耳を疑うよ・・・」


わなわなと震えるノートゥ。


「ははは・・・完全に私はピエロだな・・・」


力なく笑うシュルトゥ。


「馬鹿な事を・・・!!」


悲痛に俯くゾルゲ。


「ちょ、 ちょっと待って!!

さっきのファウストの生首は自分が復活する事を吝かでは無い様に言ってたじゃない!!」


ノートゥが叫ぶ。


「その通り、 恐らくあのファウストの生首・・・

ファウスト本人ではない」

「ど、どどっどどどういう事!?」

「ファウストの体はファウストの意志に反して生き返ろうとしているのか・・・?」

「・・・・・ゾルゲ、 これは魂とかそう言う領分の話だろ

僕達は門外漢だ、 何か分からないか?」

「分かる訳無いでしょ・・・でもファウストの魂は天に昇り

この世に有るファウストの体は蘇りを望んでいる・・・と言う事なのかな」


ゾルゲが仮説を提唱する。


「グレートヒェンにも聞かせるべき話だったな・・・」

「そうね・・・・・辛い話になるだろうけど・・・」

「・・・・・これから如何する?」

「・・・・・王を止めるしか無いだろう」

「外術を使う相手に何処までやれる?」

「・・・・・」


項垂れるヴァーグナー達。


「スクラッチとメフィストは一体何をしているんだ・・・」

「スクラッチはこの状況で動かないのはあり得ないと思う

名誉が欲しいと言っていたからこのまま王の好き勝手にさせれば

名誉も糞も無い、 滅茶苦茶になってしまう」

「スクラッチは分かる・・・だがメフィストは如何動くか予想が付かない

一体何を考えているのか全く予想が付かない・・・」

「何れにせよシュタウフェンに向かうしか無いか・・・」

「王を倒す事になるんだったら

ファウストを無理矢理でも助ければ良かったかもしれない・・・」


ヴァーグナーは項垂れる。


「起こってしまった事をグダグダ言うのは止めよう、 今はやるべき事をするだけだ

少し指示を出して来る。」


ゾルゲが立ち上がり部屋を出る。


「そ、 そうだね、 うん」


ノートゥは顔を上げる。


「・・・・・」


シュルトゥは遠い目をしている。


「やるしかない・・・か」


ヴァーグナーは笠を被り直した。

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