第196話【論理の終わり】

陸軍軍師ウェブスターはとても賢い。

魔法は使えないがまさに賢者だった。

今まで致命的なミスは犯さなかった、 だがしかし


「父が外術を使った!! これは法を犯す行為だ!!」


陸軍将軍でも有るフォンのクーデターにより今まで計算した事のない苦境に陥った。

フォースタスの外術、 及びファウストの心臓から溢れる血で強化された兵達。

これらはウェブスターの想像の範囲外だった。

結果ウェブスターは片目を失い、 フォンも左腕と右腕の親指と人差し指以外全て失い

命からがら逃げだす事には成功した物の、 数名の部下しかおらず

敗北は必至だった。

シュタウフェンの下水道で身を隠す陸軍残党はこれから如何するかの策を練っていた。


「ウェブスター名案は有るか?」


フォンは尋ねた。


「有る訳ないでしょう・・・我々は負けたのです」

「そうか・・・・・俺には王の座は分不相応だったと言う事か・・・」


力なく涙を流しながら自嘲する。

能力は兎も角野心は人一倍あった男だ。

この現実を受け止められないのだろう。

しかし涙を拭って顔を上げる。


「このままで終わってたまるか、 何でもいい何か傷跡を残したい」

「傷跡って・・・」

「俺達は負けたんだろう? じゃあ何やっても良いじゃねぇか

失うものが何も無いなら命だって捨ててやる」

「で、 殿下・・・」

「それは・・・」


陸軍兵士がざわつく。


「逃げたい者は逃げれば良い・・・

ウェブスターもそうしたければそうしてくれていい

だが俺は1人でも行くぜ、 だが策だけは出してくれ」

「・・・・・・・」


ウェブスターは考える、 だがこの状況を如何にか出来る策なんて存在しない。


「策は無いですが賭けなら有ります」

「賭け?」

「えぇ、 不本意ですが」

「何でもいい、 言って見ろ実らなくても怒りはしない」

「・・・・・スクラッチ殿を唆すのです」

「何ィ? 奴をか?」

「えぇ、 このまま王の暴走を許せば国が滅ぶ

名誉を重視するスクラッチ殿にとって称えてくれる民が居なくなるのは困るでしょう」

「だが・・・協力してくれるのか?」

「だから賭けなのです、 しかも分が悪い・・・」

「・・・・・はっ、 このままこんな暗い場所に居ても仕方がない

俺は行くぞ、 お前達は如何する?」

「お供します、 こんな愚策を提供した責任は取らないと」

「「「我等もお供します!!」」」


隠して考える事を止めたウェブスターは賭けに打って出るのだった。

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