第190話【指一本振れられない】

フォースタスが軍勢を率いて悠々と前進する。


「ゴーチエの奴、 引き籠ったか」


馬上でゆったりと進んでいるフォースタス。


「恐れながら陛下、 探知魔法の結果、 城はほぼ無人です」


シモンが後ろに控えて進言する。


「ほぼ無人、 つまりゴーチエ以外は逃げたと言う事か?」

「何故ゴーチエ大公が居ると?」

「奴は私を殺したがっているからな」

「何故?」

「奴とは因縁が有るのだよ、 ん?」


フォースタスが手を挙げて兵を止める。


「パンか・・・」


跪いているパンを視認するフォースタス。


「お久しぶりです陛下、 ゴーチエ大公から書状を受け取っております」

「ほぅ・・・おい」

「バッ」


血に塗れよろよろになった兵士がパンから書状を受け取り内容を読む。


”フォースタス・マーロウ陛下

我が手元には私が極秘で入手したファウストの膵臓が有ります

もしも無理矢理城を破壊した場合、 ファウストの膵臓も手に入らない事でしょう

貴方が無理矢理彼女を手にして、 彼女から愛を得られなかった様に

我が城でお待ちしております ゴーチエ”


「ククク・・・言うじゃないかね」


書状を丸めて捨てるフォースタス。


「さてパンよ、 お前は如何する? 特にお前を殺す理由は無いから

お前が望むならばこのまま見逃してやっても良いが」

「・・・・・」


パンは黙って剣を抜いた。


「良かろう、 その意気や良し、 その意気に免じ

私も外術は使わん、 剣のみで相手をしよう」


馬上から降りて剣を抜くフォースタス。


「うおおおおおおおおおおおお!!」


剣を振り上げてフォースタスに襲い掛かるパン。

ガギイイイイイイイイイイイン!!

フォースタスは剣戟を片手で持った剣で受け止める。


「くっ・・・」

「我が体は勇者ファウストのそれと同等の物になりつつある

正攻法では私の体には指一本振れられぬよ」

「では反則手なら如何ですかな、 EarthSpear」


地面から巨大な棘がフォースタスの背後から貫かれる。


「・・・・・えっ」


頭上から滴る血を見て間抜けな声をあげるパン。


「・・・ほう・・・如何言うつもりかなシモン?」

「貴方を隙を見て殺す、 それがヘレン様のご命令でしてね」

「そうか」


フォースタスの胸から血が溢れる。


「心臓を貫きました、 これで貴方は」

「死ぬとでも?」


フォースタスは土の棘を切断し、 自分の胸から抜いた。


「私はファウストの心臓を取り込んだんだ

自前の心臓を潰された所で・・・」

「ならばその心臓貰い受ける!!」


パンが剣を向けて襲い掛かる。

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