第162話【盗賊に心も無し】

戦線を前進させて早三日。


「・・・また居ないのか」

「その様です・・・」


伝令からの報告を聞くスクラッチ、この三日間盗賊達と出会っていなかった。

通信の魔術を通して他の場所からも情報が入って来る。


『こちらB班異常ナシ』

『C班、敵の影も確認出来ず』

『F班、敵の拠点跡を確認しましたがもぬけの殻です』

「はぁ・・・やる気有るのか連中・・・」

「一旦戻して決戦に備える腹積もりなのかも・・・」

「あり得るな・・・もっと戦線を進める必要が有る、か?」

「偵察からの報告!!敵を発見しました!!」


目を輝かせるスクラッチ。


「良し来た!!敵の数は?」

「およそ200から300、一列横隊でやって来ました」

「300?・・・話にならないな、他の班も横隊で対処しろ」

「宜しいのですか?一応本部のウェブスター様に報告を・・・」

「300だぞ?こちらの数はどの位だ?5000以上は有るだろう」

「今前線に出ている者は17000ですね」

「15倍以上の戦力差でどうやったら負けると言うんだ、押し潰してしまえ」

「分かりました」


スクラッチは独断で戦線を動かして盗賊達と戦う事になった。

スクラッチは相手を侮り戦線に出なかった、しかし・・・


『こちらA班!!敵と遭遇!!あまりにも強過ぎます!!増援を!!』

『B班!!敵が強過ぎる!!既に壊滅寸前です!!』

『C班!!敵の矢で既に魔術師がやられました!!』

『E班!!D班が壊滅!!食い破られます!!』

『F班です!!応援を下さい!!』

「な、何だ何だ!?」


スクラッチは驚愕した、報告のあまりの荒唐無稽さに。


「一体何だって言うんだ!?」

『敵があまりにも強過ぎて・・・うわ!!』

「くそっ!!」


スクラッチが立ち上がる。


「本部に連絡!!何か予想も付かない事が起こったらしい!!俺も出る!!

生き残った部隊全てに撤退を命令しろ!!」

「スクラッチ様!!敵がこちらにも!!」

「っ!!」


スクラッチの前に飛んでやって来た盗賊、筋肉が異常なまでに発達し

血管が走っている、明らかに異常である。


「っらあ!!」


スクラッチは槍で突く。

躱され盗賊が斧で殴りかかって来た。


「舐めんな!!」


間合いを詰めて盗賊の斧の柄を掴み、槍の穂先を引いて再度盗賊を突いた。

今度こそ盗賊は絶命したがスクラッチの表情は暗い。


「なんだこれは・・・こんなのが300だと・・・?

おい!!本部からメフィストフェレスを呼べ!!」

「え、えぇ!?」

「唯の増援じゃ意味がねぇ!!急げ!!」

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