第160話【心内にあれば色外にあらわる】

陸軍と王国騎士団、宮廷魔術師、近衛、ファウストの仲間だった英雄達が

一同に会したドリームチーム【全軍】は着々と【大統一盗賊団】の拠点を叩き潰し

徐々に押して行くのだった。


「・・・・・」


最前線で平原を見るスクラッチ。


「スクラッチ殿、何をしているのです?」


兵士の一人がスクラッチに声をかける。


「いや、割と滞り無く進んでな・・・俺の出番が無いかもしれない」

「楽が出来て良い事ではありませんか」

「良かねぇよ、戦わないなら俺の存在価値はマイナスに振り切れる」

「そんな事有りませんよ」

「一兵卒に言っても無駄か・・・」

「所でスクラッチ殿、陛下は如何なされたのか?」

「何の話だ?」

「以前にも陛下の戦装束は見た事が有りましたが

以前の物と趣が異なっている様に見受けられました」


フォースタスは勇者ファウストと同じ外見になっている事は

一部の者しか知らない為

現状フォースタスは顔を覆う様なフルフェイスの鎧を纏っている。


「陛下、御自らが戦場に立つのだ、あの位の防護はしても良いだろう」

「そうですか・・・」

「何だ?陛下が臆病とでも言いたいのか?」

「い、いえそんな事は有りません、寧ろ・・・」


そこまで言って言葉を濁す兵士。


「寧ろ?何だ?」

「・・・楽し気?でしょうかそんな感じがします」

「楽し気・・・楽し気か・・・」


今回の戦はファウストの死体を得る為の戦でも有る。

ファウストの死体に対する

フォースタスの執着は行き過ぎだとスクラッチも感じている。

恐らく楽し気、という感想はファウストの死体を得られるからだろう。


「気のせいだろうさ」

「そうでしょうか」

「何れにせよ、陛下の御心を我々が理解出来るとは思えない」


パッパー!!パッパパッパー!!と喇叭の音が聞こえる。

如何やら戦線を進める様だ。


「無駄話は終わりだ、配置に戻れ仕事の時間だ」

「分かりました!!」


兵士は持ち場に去って行った。


「・・・さて、如何なる事やら」


スクラッチは考える、これからどうなるのかを。

考えても仕方ない、自分は栄光を掴めればそれでいい

問題事は屍の山を築き上げてからそれからゆっくり考えれば良い。

そう考えて槍を手に取り最前線へと向かったのだった。


「行くぞおおおおおおおおおおお!!」


声を張り上げて敵に突っ込むその様はまさに英雄だった。

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