第131話【新しい仕事】

「!!」


アドリアンは起き上がった、如何やら眠っていた様だ。

見知らぬ天井に困惑する。


「俺・・・生きているのか?」

「起きたか」


ヴィンセントがやってくる。


「ヴィンセントさん、俺は一体・・・」


ぐぅうううと腹が鳴る。


「とりあえず飯にしよう、三週間位お前眠っていたんだ腹も減るだろう」

「三週間・・・分かりました」


アドリアンはヴィンセントが持って来たポリッジを食べた。


「ヴィンセントさん、俺はてっきりグレートヒェンに殺された物とばかり思っていたんですが

何で生きているんですか?」

「あの小娘が殺さなかったからだろう」


アドリアンの問いをさらりと返すヴィンセント。


「何で俺を生かしたんですかね」

「殺すまでも無いと思ったからだそうだ」

「・・・・・そうですか・・・・・」


殺されないにしても自分はファウストの遺体を奪われた

ここからどうすれば良いのか分からない、成り上がりの機会が無くなった。

正直詰んでいる気分だった。


「グレートヒェンは如何しています?」

「一昨日に出来上がった装備一式を持って出発したよ」

「そうでしたか・・・」

「所であの小娘から頼まれたんだが」

「はい?」

「お前さん、俺様の所で働かないか?」

「・・・はい?」


きょとんとする、アドリアン。


「俺もそろそろ歳でな、跡継ぎが欲しいとか考えていたんだ」

「・・・・・」

「あの小娘からお前が働き口が無いとか言っていたからな

良かったらだがウチで働かないか?小間使いからだけど」

「・・・アンタの様な鍛冶屋になれるかな?」

「さぁな、それはお前次第だ、だがお前さんは後が無いと言う理由で

勝ち目のない戦いに挑んだ

ならば必死にやればそれなりに凄い鍛冶屋になれるんじゃないか?」

「・・・・・」


アドリアンは目を閉じた、そして頬に一筋の涙が落ちる。


「是非ともお受けします」

「そうか、じゃあまずは・・・落ちた体力を戻す為にガンガン喰え」


ぐうううと腹を鳴らすアドリアン


「まだ食えるか、じゃあちょっと端っこしか無いがドラゴンの肉でも出してやるか」

「え、ドラゴンの肉って食えるんですか、と言うか有るんですか」

「いや、旨いぞ?つくねにして食べよう」

「つくねって・・・えー・・・ドラゴンのつくねって・・・えー・・・」

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