第130話【肋骨の仕事】

盾の中から現れた肋骨、当然唯の骨では無い筈

しかしサイズは人間の物と同等・・・

つまり・・・


「・・・ファウストの肋骨、って事?」


グレートヒェンが尋ねる。


「その通りだ、勇者ファウストは強い

ならば勇者ファウストの遺体を武具にすれば

強い武具が出来る筈、そう考えて俺はこの盾を作ったんだ」

「・・・なるほど・・・」

「実際強い盾が出来た、頑丈なだけではなく

持っているだけで攻撃を受け止める様になっているんだ」

「攻撃を的確に受け止められたのはそれが原因か・・・なるほど・・・」


そもそも肋骨は内蔵を守る防御の器官

ならば盾として使うには丁度良いのだろうか


「なるほど・・・体に入れてないから感知出来なかったのか・・・」

「・・・何?」


ファウストが探知出来なかったのも道理である。

しかしファウストの死体が目の前に有るのならばやる事は一つである。


「その肋骨、渡して貰うぞ」

「悪いが渡さねぇよ、これは」


ぴたり、と素手で肋骨に触るグレートヒェン。


「・・・何をしている?」

「渡して貰う、と言っただろう?」

「?」


盾の内部からずるり、と肋骨が出て来てグレートヒェンの体に入って行く。


「なっ!?何だ!?」

「ファウストの体はこうして体の中に入れて保管するのが正しい使い方だ」

「な・・・何だと・・・」


肋骨を体内に取り込むグレートヒェン。


「さて、これでお前のとっておきは無くなった

お前に勝ちの目は無くなったがまだやるか?」

「う、うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


盾を放り投げて剣を振り上げ向かって来るアドリアン。

グレートヒェンはハイキックをして剣を吹き飛ばす。


「っ!!」


構わず籠手を着けた手で殴って来るが

グレートヒェンは殴って来た腕を掴んで放り投げた。


「糞ッ!!」


悪態を吐きながらアドリアンは立ち上がる、しかし。

ヒュン、とグレートヒェンの剣が喉元に突き立てられる。


「まだやるか?」

「・・・・・」


歯軋りをしながらアドリアンはグレートヒェンを見る。


「俺は人と関わるのが苦手だ・・・これしかねぇんだ、これしかねぇんだよ!!」

「そうか、あい分かった」


アドリアンは激痛を感じた後に意識を手放したのだった。





小屋に戻って来た、グレートヒェン。


「終わったのか?」


小休止をしているヴィンセントが尋ねる、頷くグレートヒェン。


「そうか・・・」

「ヴィンセント殿、一つ頼みが有ります」

「頼み?何だ?」

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