肋骨の章

第118話【名工の仕事】

愛馬ローズオーラに荷車を取り付け運ばせるグレートヒェン。


「不慣れだろうが我慢してくれ、私一人で担ぐのは無理だからな」


愛馬を労わるグレートヒェン。

荷車に有るのは先日の大猿が居た山で手に入れた戦利品の数々。

金銀財宝に龍の死体である。


「そろそろ辿り着く筈だが・・・」


人里離れた場所に向かうグレートヒェン。


『グレートヒェン、死体の有る場所はこっちではないのだが・・・』

「それは百も承知だよ、私が向かっているのは鍛冶屋だ」

『鍛冶屋か』

「そう、君の剣【悪魔の金】を打った名工ヴィンセントに依頼しようと思ってな

懐かしいだろう」

『・・・・・すまないが知らない名だな』

「まぁ君ならそう言うだろうと思ったよ」


ファウストには拘りが無い、剣もその場その場で使い捨てていた

激戦で必要になったと言う理由で名剣、宝剣、国宝の剣を何本も使い潰し

フォースタス王の命で無理を言ってヴィンセントに武器を作って貰った。

それが【悪魔の金】である

王国が保管していた何代か前の魔王の屍から造り出した魔剣である。

刃毀れせずにファウストも気に入っていたのだが

結局、最終決戦のドタバタで【悪魔の金】も何処かに行ってしまった。

最後の戦いだからと出し惜しみせずに投げ出してしまってそのまま紛失である。

ファウストの魔王さえ倒せれば後は如何でも良いと言うスタンスは

仲間に無茶を強い、武器を使い潰し

挙句の果てには自分は魔王と相打ちでも良かったと

言う徹底ぶりだった。


「・・・君は忘れているかもしれないが

ヴィンセントは剣だけで無くあらゆる武具を造り出せる鍛冶屋だ

先日の戦いで潰れた剣の他にも私の鎧や盾も新調して貰おうと思ってな

幸いにも素材は充分に有るからな」

『なるほど・・・まぁ下準備は肝心だな、しておく必要は有るだろう』

「その通り

しかし噂で聞いたが何でこんな人里離れた場所で鍛冶屋なんかしているんだ?

明らかに不便だろうに」


先日の山程では無いが人里に離れすぎている。


「今回は君の死体も無いから骨休めをしながら武具の完成を待つとしよう」

『そうか、君の好きにすれば良いさ』

「そうさせて貰うよ」


しかし運命は彼女に休息を許さなかったのだった。

ここでも彼女はファウストの死体との邂逅をする事になるのは今はまだ知らない。

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