第117話【流浪の銃士は考える】

「スクラッチ、話がある」


フォースタスが去った後にヴァーグナー達も解散となったが

スクラッチの背に声をかけるヴァーグナー。


「何だ?」

「ここでは無く、他の場所に移ろう」

「分かった」


ヴァーグナーは人の少ない場所にスクラッチと移動した。


「さて、何だヴァーグナー?」

「今回の陛下の動向・・・妙では無いか?」

「妙?」

「ファウストの死体を手に入れたがあまりにも犠牲が多過ぎる

再建にはかなりの年月が居るだろう

特に御使いは次代の『士』が育つか分からない状況だ

次の魔王との戦いは如何転ぶか分からない」

「それが?」

「・・・私には陛下の考えが分からない、一体何を考えているんだ?

勇者の死体を全て手に入れても国が終わるかもしれないんだぞ?」

「俺は陛下じゃないから陛下が何を考えているか知らん」

「それでも推測は出来るんじゃないのか?」

「何故?」

「何故って君は歴史に名を残したいんだろ?シュルトゥから聞いたよ

国を不安定にして何になるって言うんだ?

国が滅んだら君の名前を語り継ぐ者も居ないんだろ?」

「・・・お前は馬鹿か?」


ジト目でヴァーグナーを見るスクラッチ。


「お前さ、魔物が居なければ俺達みたいな戦上手、英雄になる事は不可能だろ?」

「・・・それは分からなくもない、それが?」

「分からないか?国が不安定になる?だったらその元凶を討ち取って見ろ

まさに大英雄では無いか」

「・・・・・・・は?」


ヴァーグナーは唖然とした。


「・・・陛下を討つつもりなのか?」

「そんな事したら反逆者になるじゃないか、そんな事はしない

だがこの国の治安を乱す者が相手なら話は違う」

「・・・・・如何いう事だ?」

「これ以上言うと不敬になりそうだから言わない、自分で考えろ、じゃあな」


スクラッチはスタスタと立ち去った。


「・・・・・!!」


底冷えのする考えを思いついたヴァーグナー。

もしかしてスクラッチは王が国を省みない行動を看過して

他の王族と手を組んでフォースタスを討つ英雄になろうと

考えているのでは無いだろうか?


魔王討伐の英雄の仲間では無く、老いた狂王討伐の英雄

そちらの方が英雄としての格は上だ、しかし・・・


「英雄になりたい・・・

それだけで国を滅茶苦茶にしても何とも思わないのか・・・

ファウスト、英雄とは狂気しかないのか・・・」


ヴァーグナーはじっと手を見る。

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