第116話【流浪の銃士は項垂れる】

二週間後、ヴァーグナー達は大王城の玉座の間に集められた。

『御使い』の反逆は首領及び『士』全員の死を持って終息した。

犠牲者は『御使い』、王国側共に甚大

数だけならば王国側の犠牲者の方が多かった。

王国騎士団団長等の役職持ちに犠牲者が居ないのは幸いしたが

王国騎士団、並びに陸軍は打撃を受け

更に『御使い』が甚大な被害を受けた事により

魔物に対する海防手段が無くなり、海上よりの魔物のスタンピートが起きた場合

確実に防げない王国にとって甚大な損失を生み出す事になったこの戦

手に入った物はファウストの遺体

右手、右腕、左腕、左足、左脚、左腿、右脚、右腿・・・


「大義であったな者共よ」


フォースタスが玉座に座り戦乱に参加していた主だった者を労う。


「しかし陛下、陸軍軍師ウェブスター及び王国近衛長パンが

呪殺中のメフィストフェレスを放置して敵前逃亡したのは頂けませんなぁ」


ハンスがここぞとばかりに失態をあげつらう。


「今回は内輪揉めは厳禁だと言った筈であろうハンスよ」

「その通りですよ団長、全く恥ずかしい」

「ヨナス、貴様・・・」

「ファウストの仲間達も御苦労だったな

義勇軍の名誉回復については任せておけ」

「・・・陛下、質問をさせて頂いても宜しいでしょうか?」


ヴァーグナーが口を開く。


「許す、延べよ」

「ファウストの四肢を取り戻せましたが失った物があまりにも多過ぎます

割に合わないのでは無いでしょうか?」

「私はそうは思わないがな、あのファウストの四肢だ充分に割に合うと思うぞ?」

「しかし海防手段の損失、騎士団と陸軍の疲弊は無視出来ないレベルに」

「問題無い」

「問題無いですと?」


声を荒げ立ち上がるヴァーグナー。


「ヴァーグナー、陛下の御前だぞ」

「構わんよスクラッチ」


ヴァーグナーを諫めようとするスクラッチを制するフォースタス。


「犠牲になった者達には弔いをしよう弔辞も述べよう、二階級特進も与えよう

立派な慰霊碑を建てて英雄として後世にまで称えよう

遺された遺族達には保障しよう、それが出来る程の人間性と経済的余裕は有る」

「・・・・・」

「さて、ヴァーグナー、私が遺族と犠牲者の為にしてやれる事は他に有るのかね?」

「いえ・・・有りません」


再び座るヴァーグナー。


「宜しい、では今日は解散とする御苦労だったな諸君」


玉座から立ち上がるフォースタス、その背中を見るヴァーグナー。

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