第119話【職人の仕事】

ヴィンセントが住む場所は険しい山奥と言う訳では無いが森の中で

交通の便も悪い所だった、そこに粗末な小屋が建っていた。


「ここがヴィンセントの家か?すみませーん、誰か居ますかー?」


グレートヒェンが小屋の中に声をかける。


「誰だ!!喧しいぞ!!」


小屋の中から初老の男性が現れた。


「貴方が名工のヴィンセントさんですか?」

「だったら何だって言うんだ!!」

「仕事の御依頼に来まして・・・」

「仕事だぁ!?断る!!」

「何故?」

「俺はよぉ!!強い奴にしか武具を作らねぇって決めてんだ!!」

「私もファウスト程では無いのですが相応に強いと思います」


男性はピクリ、と眉を顰める。


「ファウストだぁ!?てめぇも奴を最強だとか言うつもりか!?」

「え、いや魔王を倒しましたし・・・」

「あんなん外術使えるだけじゃねぇか!!

あんな奴を最強だのなんだの持ち上げてるのはふざけんなって思う

今の国王は地味な政策ばっかりだが奴の処刑は名判断だった」

「・・・・・」


今度はグレートヒェンが眉を顰めた。


「じゃあ何か?貴方は魔物に蹂躙されるのがお好みだったと?」

「そんときゃあ俺様が自分で作った武具で出るまでよ!!」

「鍛冶屋なのに戦えるのですか?鍛冶が本職でしょう?」

「本職じゃなくても武具を使う仕事だからな!!」

「・・・・・じゃあ伺いますが貴方は武具を使う職だからと

騎士が鍛冶を始めたら如何思います?」

「はぁ?何抜かしてんだバーローめぃ、そんなんふざけた事言うんじゃねぇって言うよ」

「そうですね、貴方も戦うなんて世迷言を抜かさないで下さい」


男性とグレートヒェンは互いに見合わせ火花を散らす。


「・・・てめぇなにもんだ?」

「グレートヒェン

貴方が言った外術を使えるだけの男に憧れている女騎士です」

「女騎士か・・・女なのに騎士か?」

「えぇ、男が頼りないので」


互いに険悪な雰囲気になる二人。


「お前、仕事を頼みに来たのに喧嘩腰じゃねぇか」

「貴方が喧嘩を売って来たので買いました」

「律儀な奴だな、領収書は要るか?」

「いえ、私個人の依頼なので領収書は不要です」

「おい、誰が仕事を受けるって言った?喧嘩の領収書は要るか?って事だよ」

「えぇ、ですので私個人の喧嘩なので領収書は不要です」


冷静に受け答えるグレートヒェン。

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