第107話【流浪の銃士は危惧する】

「・・・・・」


船内の窓から外の様子を観察するヴァーグナー。

所々で兵が大海城に乗り込みつつあり

攻め込めているこちらが有利な状況である。


「・・・・・」


だがヴァーグナーの顔色は優れない。


「・・・ササキやコンドウは何故来ない?」


ササキやコンドウの不在は訝しんでいた、ササキは最初から出撃せず。

コンドウは大剣の準備で出発が遅れてしまった

更にサイトウとスクラッチの戦いを前に

気を効かせて二人きりにして大回りをしていたので

まだ主戦場に辿り着けていなかった。


「・・・」


何れにせよ対策はしなければならない。

こちらの兵が大海城に乗り込みつつあると言う事は此方が優勢と言う事だが

それは戦場全体での話、旗艦周囲の戦闘では人数が減っているのだから

どんどん不利になって行くのは容易に想像出来る。


「・・・・・」


味方の数が減って来た事で乱戦状態が解消されつつあった。

ヴァーグナーは窓を開けて拳銃で何人か雑兵を狙い撃った。


「ぐわ・・・」

「うぐ・・・」

「くっ・・・何処だ!!」

「そこの窓だ!!」


見つかったので窓を閉めて離れる。

窓には矢が無数に射られて散々たる有様になった。


「・・・一旦外に出るか?いや・・・」


外で高梯子が視界の端に移った。


「甲板から乗り込む気か、ならばもう一度甲板に戻るか」


甲板に昇るヴァーグナー。



一方で地上では。


「ぐあ!!」

「ぎ!!」


ナイフで次々と敵を仕留めるシュルトゥ。


「あのナイフ投げてる娘・・・何者だありゃあ・・・」


ナイフを叩き落としながらヒジカタが呟く。


「さぁね、ただ・・・おっと!!出来る奴ですね!!」


ヤギュウもナイフを剣で受けたり避けたりしている。

危なげは無いがそれでも相手を脅威に思っている。


「高梯子が来た、甲板から船に乗り込むぞ!!」

「承知!!」


ヒジカタとヤギュウが梯子に向かう。


「させるな!!梯子を倒せ!!」


ハンスが騎士達に命令するも、騎士達は『御使い』の兵に止められて先に進めず

攻撃もヒジカタとヤギュウには通用しなかった。


「えぇい私が前に出る!!援護し」


ドゴォオオオオオオオオオオオオン!!と轟音が鳴り響く。


「な、なんだ!?」


轟音の先を見てみると空から騎士達の木っ端微塵になった体が降り注ぐ。

そして大剣を担いだ男がやって来た

ヴァーグナーが危惧したコンドウの登場である。

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