第99話【流浪の銃士は困惑する】

自分の名前を呼ばれて一瞬足を止めるヴァーグナー。


「ヴァーグナー・・・様ですよね?」

「・・・そうだが、それがどうかしたか?」

「ヴァーグナー様?」

「本当にヴァーグナー様か!?」


ぞろぞろと家屋から住民達が現れ周囲を取り囲まれる。


「・・・な、何だ?」

「本当にヴァーグナー様だ!!」

「お願いします我等を御救いして下さい!!」

「ちょ、ちょっと!?何事だ一体!?」


困惑するヴァーグナー。


「ここでは貴方はちょっとした有名人ですから」

「は、はぁ!?さっきアンタ無視したじゃないか!!」

「仕事中ですし・・・ほらほらお前達

一旦退け、これから首領様の所に御案内するのだから」

「首領の下へ!?首領を討ってくれるのですか!?」

「お願いします!!

レーヴァーキューン様は乱心なされたのです!!如何かお願いします!!」


ヴァーグナーの元に集まる街の人々。


「え、お、おい・・・御使い側の兵の前でそんな・・・」

「構いませんよ」

「え?」

「首領様はもう彼等の事なんか気にしてませんよ」

「な、何が起きているんだ?」

「おいおい、お前達、客人が困っているじゃないか」

「お前は・・・」


城の方から歩いて来る声に反応するヴァーグナー。


「その奇抜な格好・・・ヒジカタ・・・か?」

「久しぶりですねぇ若」

「もう若じゃない、勘当されている」

「別に良いじゃないですか、じゃあお前達、一旦離れろ」

「・・・・・」


街の人々は渋々離れた。


「・・・何なんだこの街の状況は」

「うん?」


ヒジカタに疑問をぶつける。


「何で僕が有名人になっている?」

「そりゃあアンタ、ここの出身で勇者の仲間と来れば有名にもなるさ」

「そうなのか?」

「そりゃあここにも情報は来るからな」

「・・・勝手なもんだな」

「そうだなぁ追い出した時、誰も見送りに来なかったのにな」

「・・・・・」


黙るヴァーグナー。


「傷付けたか?すまんね」

「別に・・・それでさっきの街の人達・・・何でスルーする?

君達には不都合な事を喋っていただろう?」

「あぁそれか、首領は機嫌が物凄く良くなってな」

「は?」

「大体の事は何でも許す様になっている」

「は?」

「アンタの面会もそのせいだろ」

「・・・全く意味が分からんのだが・・・」

「本人に聞けば良いんじゃないのか?ほら着いたぜ」


城に辿り着くヴァーグナー達。

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