第82話【山の上にて】

「やぁこんばんは」


洞窟の中から影が現れた、文字通りの影、人型の穴

暗闇を擬人化すればこんな感じなんだろうか

それがファウストの首を持ち上げて現れた。


「何者だ!?」

「なにものか?じゃあきみはなんだ?」

「・・・・・騎士グレートヒェン」

「きしというにはあまりにもちくしょうじみてるねぇ」


猿達の返り血で汚れている今のグレートヒェンは畜生と言うより

修羅の様であった。


「悪かったね」

「わるかないよ、ちくしょうじみているというのは

ごうがふかいということをあらわしている、じつにすばらしいことだとおもうよ」

「・・・それで貴方は誰?名乗らせておいて名乗らないなんて

言わないでしょうね?」

「うん、ぼくにはなまえがないんだ

とりあえずやくしょくの【してんのう】”たいし”とよんでね」

「・・・四天王?太子?」

「”たいし”ね」

「・・・・・四天王とか言われても・・・何それ?」

「うん、まおうのしたで

いちばんつよいよにんのまものとかかんがえてもらえるといいね」

「魔王の残党か!?」

「あつかいとしてはそうなるかな」

「だが解せないわね、魔王の手下の中で最強なら何で魔王と共に居なかったの?

魔王城に攻め込んだ時にそんな強い魔物が

四匹も居たら私達は危なかったかもしれなかったのに」

「うん・・・それがねまおうはぼくたちしてんのうのちからをかりていたんだよ」

「どういう事?」

「とくべつなまほうでねぼくたちしてんのうがいきているかぎり

まおうはぱわーあっぷする

そういうまほうをつかっていたんだ

だからぼくたちしてんのうがいきているかぎり

まおうをたおすのはふかのうだとおもってぼくたちはせかいかくちにちらばっていたんだけど

まさかゆうしゃがげほう、いやげじゅつ?をつかってしてんのうをむしして

まおうをちょくせつころすなんてそうぞうだにしなかったんだよ」

「・・・つまり貴方達四天王を倒してから魔王を倒すのが

魔王の正しい倒し方だった、って事?」

「そういうことになるかな、まぁごりおしもちからおしもきらいではないかな」

「・・・そう、それで一体私に何の用?魔王の敵討ち?」

「なにいってんの?まおうをたおしたのはきみじゃなくてゆうしゃでしょ?

そのゆうしゃもおうさまにころされちゃったけどね

いやぁにんげんはごうがふかい」

「・・・・・」

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