第81話【常識の中にて】

大猿から呼び出されたが猿達は直ぐに向かわなかった。

何故呼ばれたかは分かっている、山の外から来た”あれ”の事だろう。

猿達は二つに分かれた、”あれ”と戦うか、戦わないかと言う意見対立だ。


このまま黙ってやられっぱなしにする訳には行かないと言う血気盛んな猿と

”あれ”に勝てる訳が無いと逃げ腰の猿である。


血気盛んな猿達は逃げ腰の猿を置いて、山の上に昇って行った。

途中で岩が落ちて来たりしたが

それでも血気盛んな猿達はそんな事は知らんと昇って行った。

血気盛んな猿達は恐れ知らずなのだ、だからこそ平気で死地にも行ける。

だが猿達は恐怖を知った。


「キ・・・」

「キキィ・・・・・」


山の上に嵐が有った、大猿と”あいつ”の戦い、まさに小型の嵐である。


「・・・」


猿の一匹が嵐の中に石を投げ込む、石は砕かれる。


「キィ・・・」


最早自分達が如何こう出来る次元の話では無いと猿達は悟る。

猿達は自分達が巻き添えを食う前に逃げる事にした。


大猿は猿達を待ち続ける、猿達が逃げた事等気が付きもしなかった。

無理も無い、大猿が猿達のボスになってから猿達は自分の手足も同然だった。

自分の意に反する等思いもしなかった、もしも大猿が素早く動かず

猿達を待って居れば、猿達も恐れずにグレートヒェンを襲ったのかもしれない。



何れにせよ大急ぎで倒そうとしたのは悪手だった。

激しい運動で血流が活発化し、尋常じゃない程の血が腕から流れ出る。


「ぐお・・・」


動きが鈍る大猿、グレートヒェンは大猿の首目掛けて剣を振り下ろした。


「ガァ!!」


大猿は頭を横にして口で噛みつき剣を止めた。

ドスッ、と鈍い音がした。


「ギ?」


大猿は自分の下腹部に激痛が走ったのを感じた。

ふと下を見ると娘の左腕が自分の腰に突き刺さっている。

そしてもぞもぞと何かを探している様だった。


「ガアアアアアアアアアアア!!」


大猿は思い切り殴りつけようとしたがバックステップで回避された。


「ぐ・・・あ・・・」


大猿は突っ伏して倒れた、急に力が抜けて来たのだ。

何故?と大猿は困惑し、歯で止めた剣を離した。

グレートヒェンは剣を拾い上げて大猿の首を刎ねた。

大猿の首は山の下へと転がり落ちて行った。


「ふぅ・・・これでファウストの腰が手に入った・・・」


グレートヒェンは溜息を吐いて手に有るファウストの腰を自身の体内に入れた

そしてファウストの頭部を拾おうと探し始めた。


「さがしものはこれかい?」

「!?」

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