第79話【打算の中にて】

ガキン!!と火花が散る。

大猿の手に持った岩とグレートヒェンの剣がぶつかる。


「くっ!!」

「・・・・・!!」


岩と剣の一合でグレートヒェンは確信した。

間違いなくこの猿は今まで戦って来た者の中でも上位に来る怪物だと。

先程殴って来たのは様子見で腰が入っていなかったのだろうか。

今の攻撃は間違い無く先程の攻撃よりも強かった。

腕の痺れが取れない、様子見をすべきだろうか?

いや長引けば猿の増援で不利になるだろう、先の攻撃で剣も少し刃毀れした

ここは一気に行くしかない。


大猿も確信した、目の前の”これ”は化け物だと。

自分の一撃は確実に殺すつもりの一撃だった、大トカゲですら怯んだ一撃だった。

いやその時よりも自分は強くなった、この小娘、いや見た目からは想像も出来ない怪物だ。

あの影と同じく・・・後ろに大猿は目をやる。


「・・・・・」


影は洞窟から出て来ない様だった。

如何やら影の手助けは期待出来ない様だ、何時もの事だが。

以前は助けて貰った、今回も助けてくれるか?如何だろうか・・・

ならば逃げるか?いやここで逃げても影に殺されるかもしれない・・・

それならばここは・・・


「・・・・・スゥー」

「ん?」

「ウホオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

オオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


大猿の絶叫が山中に木霊する。


「仲間を呼ぶ気か!!」


グレートヒェンは腹を括った。

ここでこの大猿を殺してファウストの遺体を奪うと。


一方の大猿は腹を括ってはいなかった。

手下の猿共を呼び寄せて隙を作って一気に攻め立てれば良い、と。

故に大猿は攻撃よりも防御に重きを置く事にした。


「はあああああああああああああ!!!」

「!?」


それ故に目の前の娘が刺突の体制で突っ込んで来た事に驚きを隠せなかった。

大岩で防ごうと、大岩を握った拳を前に出した。

しかし大岩毎、手を貫かれた。


「グオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」


声にもならない絶叫が周囲を包む。

が、それも一瞬、大猿は先の刺突で砕かれた大岩をそのまま投げ飛ばした。

腰の入った岩の散弾が激突すればグレートヒェンもただでは済まなかっただろう。

だが。


「グ!?」


超高速で動き回り岩を回避するグレートヒェン、大猿は驚愕した。

まさかこの娘も、自分と同じ様な力を持って居るのかと。

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