第78話【月の下にて】

ファウストの右足の力を使って山を登って行くグレートヒェン。


「凄いわねぇ!!」


最初に山を登った時とは段違いのスピードで山を登っている。

猿達の戦闘で鍛えられた証拠である。


「うん?」


空から大岩が降って来る、今なら回避も簡単に出来る。

斜め上に飛んで大岩と擦れ違う。


「ふぅ」

『油断するな、前!!』

「?」


またしても大岩が上から飛んで来る、再度斜め上に飛ぶ。

だがしかし


「!?」


如何やら敵は複数大岩を投げて来た様で避けた先に更に大岩が飛んで来ていていた。


「くっ・・・行けるか!?」


グレートヒェンは回避を諦め、左手に力を込めて大岩を殴り飛ばす。


ドギャアアアアアアアア!!!


ファウストの遺体の力も加味されたのか轟音を立てて砕け散った。

反動でやや下にグレートヒェンは飛ばされたが

構わず上に上り続ける事が出来ている。


「くっ・・・」

『油断しない方が良いと忠告するよ』

「分かってるよ!!」


次々と投げられる大岩を躱し、時には砕きながら上に昇るグレートヒェン。

そして山の上、最初に来た台地よりも上にある大穴を見つけた。


「何、この穴は・・・」


ぶん!!と言う音を響かせながら穴の中から大岩が投げつけられた。

グレートヒェンは左手で受け止め左足で踏みとどまった。


「そぉい!!」


そして穴の中に投げ返した。


「ギャ!?」

「キィ!?」


猿達の鳴き声が聞こえる。

だがまだ敵は生きていると警戒したまま進むグレートヒェン。


「・・・・・」


穴の中を見るグレートヒェン。

ぬっ、と穴の中から巨大な手が現れグレートヒェンを殴り飛ばす。

グレートヒェンは剣で防いだが吹き飛ばされた。

崖から落ちない様にバランスを取った後に敵の姿を見た。

今までの猿よりも遥かに巨大な大猿、体中に傷が有り歴戦の強者だと分かる。

手には大岩が握られており、如何やらこの岩で殴り殺すつもりの様だ。


『グレートヒェン、信じ難い事だが、私の遺体はあの大猿の中らしい』

「!?貴方の死体って畜生でも使えるの!?」

『信じ難いがそういう事らしい』

「くっ・・・やるしかないか!!」


剣を構えるグレートヒェン、大猿は黙してグレートヒェンの前に立つ。


空には月が輝き月光が各々を照らす。


そして一陣の風が吹き、激突した。


「ふふふ、おもしろそうなことになってきた」


影が嗤った。

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