第74話【死地にて】

殺到する猿の群れ、剣で斬り飛ばし拳で殴り殺し畜生の血で

グレートヒェンはその身を染めていく。


「・・・・・」


キリがない、と思ったが口にする事は止めた

現状はそんな事に思考を割いている暇は無い。

ファウスト達とのスタンピートの時とは状況は悪いと言える。

敵は魔物より格下の猿だが、あの頃と比べれば自分一人で体にはダメージが有る。


「・・・・・」


だが意識はクリアで戦い続ける事には支障は無い。

体の痛みは未だに引かず、寧ろ強まっているが、無視した。


「キィー!!」


左側から飛んで来る猿、咄嗟に猿の腕を掴んで投げ飛ばすグレートヒェン。


「ギィィィッィィィ!?」

「ギャ!!?」

「ギィ!!」


投げ飛ばされた猿は血塗れになりながら吹き飛び何匹かの猿を巻き添えに血溜まりに消えた。


「!?」


グレートヒェンは驚きで腕を止めた、ほんの一瞬。

一瞬後には猿の群れに再度立ち向かった。

猿はまるで砂糖に群がる蟻の様にグレートヒェンに群がる。

また大岩が来るのではないかと上にも気を払っているが杞憂の様だった。


「・・・・・」


息は乱れない、寧ろ平時の時の様だった。

何故?と猿を殺しながらグレートヒェンは思った。


「そうか!!肺か!!」


この間、殺したハイエルフから奪い去ったファウストの肺。

その肺が呼吸を助け息切れを防いでいるのか!!

ならば先程の腕力もファウストの左手の力・・・

自分は知らず知らずの内のファウストの遺体の力を出しているのだと

グレートヒェンは確信した。


「ごめんなさいファウスト」

『何故謝る?』

「私一人で戦っていると思ってしまって」

『うん?』

「貴方が付いてくれるのならば私は戦える!!戦い抜けられる!!」

『そうか、それは良かったな、存分に力を引き出すんだ

そうすれば猿の群れなど物の数では無い』

「分かった!!」


歓喜が混じった声でグレートヒェンは剣を振い続けた。

猿の殺到は未だ止まず、されどグレートヒェンの顔に影は無い。







「キィ!!キィ!!」

「・・・・・」


グレートヒェンが剣を振い続けるのと同時刻山の上では

手下の猿共が殺され続けていると報告を受けた者が大岩を手に取った。

先程の様に避けられるかもしれないが投げて一旦仕切り直さなければならない。

そう感じたのだが・・・


「まだだ」


あぁまたか、と彼がうんざりする。


「・・・・・」

「まださるをむかわせつづけろ、わかるな?」


こくりと彼は頷いて大岩を置く。

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