第73話【山の麓にて】

目が覚めたグレートヒェン。

体の調子は本調子では無いが、良いタイミングで目が覚めた。


「キィ!!」

「・・・」


目の前に迫る猿を殴り飛ばし起きるグレートヒェン。


「また猿か・・・全く・・・懲りない連中だ」


剣を取り猿に向かうグレートヒェン。


「キィー!!キィー!!」

「?」


猿は襲って来たにも関わらず逃げ出し大声を上げて逃げ出した。


「何なのよ一体・・・」


グレートヒェンは困惑した、そして視界が暗くなった。


「!!」


グレートヒェンは落ちて来た大岩を回避した。

先も大岩に押し潰されそうになった経験が活きたのだ。


「二度も私に向かって大岩が落ちて来る?そんな偶然が有るかッ!!

誰かがやっているに違いない!!」


その確信の元、グレートヒェンは走ってその場を離れた。


「っ!!」


走っていると体に激痛が走る、如何やら怪我がぶり返した様だ。


「はぁ・・・はぁ・・・」


グレートヒェンは木々の間に身を潜めた。


「キィー、キィー」


遠くで猿の声が聞こえる。


「・・・如何やら猿を索敵に使っている様ね」

『如何する?』


体内のファウストがグレートヒェンに尋ねる。


「・・・逃げる?」

『君の体の状態から逃げきれそうか?』

「・・・無理ね、じゃあ戦う?」

『逃げるのが無理なのに戦えるのか?』

「・・・無理ね、じゃあ如何する?」

『命乞いでもしてみるか?』

「猿に言葉は通じないし

大岩を投げて来る奴に命乞いが通じるとは思えない・・・」

『八方塞か?』


グレートヒェンは軽く笑った。


「確かに戦うのも逃げるのも無理・・・

だけど私は貴方の復活と言う無理を通す為に

こうして旅をしている、だったら無理の一つや二つ踏破して見せるよ」


まるで自分に言い聞かせる様にグレートヒェンは立ち上がる。


「覚えてるファウスト?」

『何がだ?』

「ファウストが仲間を集めて最初にやった事・・・」

『何だったかな?』

「魔物のスタンピートに皆で突っ込んだ事だよ」

『あぁ・・・そんな事も有ったかな』

「あの時、皆ボロボロで死にかけたじゃない、私は既に無理を行った事が有るんだ

だったらこの無理も押し通して見せる」


グレートヒェンは足をふらつかせながら立ち上がる。


「・・・今回も生き延びてやる」

『私には何も出来ないが、私の体を有効に使うんだ』

「如何やって?」

『自分で考えろ、ほら来るぞ!!』


猿の群れがグレートヒェンに向かって突っ込んで来た。

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