第66話【暗い夢】

「・・・あのジェラールと言うのは随分君の事を信頼している様に見えたけども?」

「えぇ、随分昔から媚び諂いましたからね、今や彼の妻の様な立場ですよ」

「・・・・・アイツは見た所まだまだ子供に見えたが?」

「彼には大人の男として接しましたよ」

「大人の男?」

「えぇ」


これ以上問い詰めるのはスクラッチも気が引けた。


「私は成り上がりたいんです」

「・・・共感が持てる言葉だな」

「その為に強くなろうと思い為に武術を磨きました

ですが女の身なので剣や槍では心もとない、そこで銃を学びました」

「中々に良いアイデアだ」

「盗賊団に入り頭角を現しました、だがこの世を真に支配するのは貴族

そこで私は貴族に取り入る為に盗賊団から誘拐された子供を助け

善良な事で有名な前当主の元に転がり込んだのです」

「なるほどなるほど、仲間を売った訳か」

「非難は受けましょう」

「いやいや俺も勇者を王様に売ったんだ、気にする事は無い」

「・・・・・その後私は」

「息子相手に枕営業、か?」

「枕営業、の意味は分かりませんが、恐らくその通りです

ジェラールの信頼を得て、前当主が死んだ後に私はジェラールを唆して破滅に導いたのです」

「ほう・・・あの餓鬼を破滅させて如何するつもりだ?」

「もっと他の有力な貴族に取り入ろうと言う算段でした」

「如何やって?」

「この死体の他にも様々な手段が有ります、裏金とか」

「釣銭をちょろまかすのは使用人の特権だよ」


スクラッチはこのメイドに対し好意的に見始めて来た。


「良いだろう!!どうせ俺の役目はあの餓鬼を連れて来る事だけだ

アンタの事は出来る限り良く伝えておこう

だがゴーチエ大公が如何するかの判断は分からんぞ?」

「構いません、私は最初何者でも無かった、死んだとしてもその状態に戻るだけ

ならばどれだけ成り上がれるか試してみるのも良いでしょう?」

「気が合うな、俺も名を挙げたくて仕方ない性質だ

互いに頑張って成り上がろうじゃないか」

「えぇ・・・では膵臓をどうぞ」

「有難く貰っておこう」


ミシェルから箱を受け取ったスクラッチ。


「じゃああの餓鬼の所に戻るか」

「えぇ、そうですね」


立ち上がるミシェルとスクラッチ、互いに成り上がる事を夢見て

軽やかに子供の所に向かう。

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