第D話【処刑翌々夜】

「グレートヒェン殿が居ない!?」

「は、はい出て行った後だと・・・」

「情けない、それでも私の後釜か!!」


現王国騎士団長ハンスが腹立ちながら連絡の兵に怒鳴る


「失礼します!!」

「今度は何だ!?」

「ゴーチエ大公がお見えです」

「何だと!?」


騒めく一同


「貴族の中でも一番の権力者が一体・・・」

「そもそも誰が呼んだんだ?」

「ぐぬぬ・・・」

「と、とりあえず来て貰ってくれ!!」

「了解しました!!」


兵が慌てて駆け出す


「・・・・・こうなっては一刻の猶予も無い、ヴォルフガングを呼んで来てくれ

無理矢理でも良い、大公殿が何を企んでいるか分からん」


クリストファー王子が兵に伝令を託した


「最早一刻の猶予も無いな」

「国王陛下があんな状態では・・・」

「不敬だぞヨナス!!」

「ゴーチエ大公をお連れしました!!」


ざわ、と部屋の中が騒めく

部屋の外から長身のマントを着た男が入って来る

彼こそがゴーチエ大公、王に次ぐ権力を持った

この国の事実上のナンバー2と言っても過言では無い男である


「た、大公殿、何用で参られたのかな?」


クリストファー王子が引き攣った顔で尋ねる


「いえ、陛下が崩御なされたと言う不謹慎な噂が流れまして

その噂の真偽を確かめに参りました、それで陛下は?」

「ち、父上は怪我を負いまして・・・その・・・」

「ふむ、それは心配です御見舞いをさせて頂けますかな?」

「いやー・・・そのー・・・」

「お言葉ながら大公閣下の言い分にも理が有ると思います」


スクラッチが口を開く


「!?」

「なっスクラッチ殿!?」

「良いではありませんか見舞う位、そう思いませんか?」


(一体何を企んでいるんだ、この男は・・・)


第四王子のフォンはこの状況を考え始めた


(この大公の目的も分からん内に何故要求をあっさり呑むんだ?

そんな事して何のメリットが有る?)


「失礼ながら大公閣下」


(パンか、止めるよな、当然)


「我々近衛と同席で宜しければ見舞いは可能ですが」

「なっ!?」

「えぇ、是非、陛下の容態を見ておきたいのです」


(何故止めない!?)


「失礼ながら私も陛下の御見舞いに参じたいのですが宜しいでしょうか大公閣下」

「スクラッチ君、だったかな?悪いが私は君の事を良く知らないんだ

だから遠慮して貰えるかな?」

「・・・失礼致しました」

「すまないね」


(何だ、これは一体何なんだ!?)

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