第A話【処刑翌日】

首都シュタウフェンの広場はその日

戦場と言っても過言では無い騒々しさだった

首都シュタウフェン中の医者と治癒魔法が使える魔法使いが総動員され

野営病院として機能していた


爆発による負傷で数多くの民衆が傷付き倒れている断頭台の周りから

引っ切り無しに怪我人が運ばれ続けていた


その様子を大王城の割れた窓から眺める第一王子クリストファー

正当なる王位継承者だが覇気や能力に欠ける


「酷い光景だ・・・」

「ヴォルフガングが陣頭指揮を取っているからあそこはそのままで良いでしょう兄上」


兄と呼んだのは第四王子のフォン

彼は王国陸軍の将軍でもあり野心が有る、但し頭が足りない


「そなた等、随分と余裕だこと」


二人を呼び掛けるのは第一王女ヘレン

王位継承権は無い物のフォースタス王の子供達の中での長子である


「父王が亡くなられた今、我々が国を背負わなければならないのですよお兄様達」


第二王女キャスリーン、末子ながら聡明な少女である


「キャスリーン、父王は未だ生きておられる、そうだな?」

「はい兄上、陸軍が陛下を救出しました、ですがもってあと数日でしょう」

「そんなに酷いのか?」

「頭に骨の破片が刺さっています、下手に動かしたら死ぬでしょう」

「フォン、王に向かって死ぬとは何事ですか失礼な」

「失礼、姉様」

「・・・ヨハンは何処に?」

「さぁ・・・奴のお抱えの騎士達も行方不明だし一体何が起こっているやら・・・」

「と、とりあえずだ、ヴォルフガングを呼んで

これからについて議論すべきだろう?」

「ヴォルフガングは民達を助けるのに躍起になっていってそれどころじゃないですってよ

事態のとりあえずの鎮静化を図る為に後二日は欲しいとの事」

「二日!?二日も待てと言うのですか!?」

「ヴォルフガングでなければもっとかかるでしょう」

「・・・・・」


閉口するクリストファー


「兄上、何れにせよ父王がお隠れになられれば貴方が次の王だ」

「わ、私が!?む、無理だ!!そんな思い重圧には耐えられない!!」

「ならばヴォルフガング兄様が次の王に?」

「いやいや、女子には王位継承権は基本的に無いが例外的な戴冠も認められる

ここは第一王女たる私に譲渡すると言う手も有るぞ?」

「それは無理筋では・・・?」

「例外なればヴォルフガング兄様の戴冠が一番現実的では?」

「それは何故だキャスリーン?」

「だって今民の事を想い行動しているのはヴォルフガング兄様ではありませんか」

「陸軍達を動かし私も民の救護に回ります!!では失礼!!」


その場を去って行くフォン


「・・・彼は野心が有るなぁ・・・

私にはそんな物は無いから羨ましく見えるよ」

「クリストファーはもっと前に出るべきだと私は思うがね」

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