第1.99話【処刑直前】

第三王子ヨハン、そしてヨハン麾下の騎士達数十名は

彼等は魔王討伐において目立った活躍はしなかったが

彼等が居なければ首都シュタウフェンは陥落してだろうとされる

それ程の実力者集団だ


そして今回彼等は勇者を助けるべく行動を開始した

美辞麗句を掲げているが彼等

と言うかヨハン王子の目的はクーデターによる政権奪取である

勇者を助ける云々は唯の口実なのだ


ざっざっと行進する騎士達の前に一人の立ち塞がる者が現れた


「・・・何者だ?」

「・・・・・」


その者は龍の頭蓋を頭にかぶり、ヒョウ柄のローブを身に着けていた

ローブの中は蛮族が着る様な胸と局部を隠す様な簡素な服だった

体付きからして女性だった


「・・・・・何者だと聞いている」

「Icicle burst」

「!!」


目の前の女が魔法を唱えて来た

大量の氷柱が現れ、騎士達に向かって来る


「王子!!下がって!!」


盾を構えた騎士達が防ごうと前に出るも盾を貫き騎士達は絶命した


「ぎゃああああああああ!!!」

「ぐわああああああああ!!!」

「くっ・・・怯むな!!相手は魔法使いならば近づけば」

「Flare burst」

「な、連続して」


炎の塊が騎士達の中央に現れ、そして弾けた

騎士達の体は粉微塵になり血溜まりと化し目玉と数本の歯だけになった騎士達


「ば、馬鹿な、こんな・・・」


辛うじて死を免れたヨハンと数名の騎士達がよろけながら立ち上がる


「この強力な魔術の数々・・・貴様、噂に高い賢者メフィストフェレス・・・」

「・・・・・」


目の前の賢者は黙して語らず


「何故だ!!勇者を助けたいとは思わんのか!!」

「・・・・・」

「何とか言ったら如何なんだ!!」

「我が言葉は世界を支配する真言なり」

「!?」

「我に喋れと?自惚れるのも大概にせよ」


傲慢な賢者の物言いに絶句するヨハン


「Dark hole」


黒い穴がメフィストフェレスから放たれヨハン王子に向かう


「な、何だ・・・?」


今までの暴力的な魔法とは違い攻撃的な物を感じず

見た事が無い魔法に困惑するヨハン王子


「・・・・・!!」


穴に自分達が吸い込まれている事に気が付きヨハン王子は逃げようと試みる

だが逃げられない


「馬鹿なっ・・・!!なんだこれは・・・!!」


騎士達が、騎士達の死体が、血溜まりが吸い込まれ消えていく


「こんな・・・もう少しで私は王座を手に入れられる筈だったのに・・・こんな・・・!!」


ヨハン王子も穴に吸い込まれ消えていく


「嫌だ・・・!!こんな・・・何も出来ずに終わる等・・・!!」


それがヨハン王子がこの世界から消える前に遺した最期の言葉だった

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