第30話【聖女の改革】

執務室に戻るゾルゲ


「お帰りなさいませ、領主様」

「ジマーン殿」

「グレートヒェン殿は?」

「もうここを発ったよ・・・」


自分に椅子に座るゾルゲ


「・・・浮かない顔ですが、悪童の足も斬り、魔道具も回収出来

全て解決したのではないのですか?」

「あ、ジャベス君の足そのままにして来ちゃった・・・」

「な!?」

「ま、まぁ子供の足切って全て解決とかそんな上手い話は無いですから」

「良いんですか、それで・・・」

「良いとしか言う他有りませんよ・・・

そうそう、グレートヒェンのこれからの動向をチェックする事になりました」

「グレートヒェン殿が何かしたのですか?」

「何かしそうなんですよ、国家に忠誠を誓った騎士が

王族をだしにしたんです、何かしでかすかもしれないじゃないですか」

「既にされている気もしますが・・・」

「それもそうですね、視察は今日限りで良いでしょう

人を潰すのも飽き、いや悪人はもう粗方潰したでしょうね」

「・・・・・そうですね、これからは通常業務に?」

「判子を押す日々も飽き、いや判子を押し続けているだけでは駄目でしょう」

「・・・・・では如何するのですか?」

「・・・先日のスラム浄化予算の書類、まだ有りますか?」

「えぇ、有りますが・・・何をなさるつもりで?」

「もう憂鬱に過ごすのは止めにすると言う事です」







後日、ドナウエッシンゲンにある場末の酒場の一つ

今日もここで色んな連中が酒を呑みながら文句を言い合っている


「聞いたか?」

「スラムに炊き出しをするって話だろ?聖女様も訳分かんない事するなぁ・・・」

「あんな連中にタダ飯食わせて何になるっていうんだ・・・」


商店を営んでいる親父達が話している、そこにやって来る騎士二人


「お!!騎士様じゃねーですか、奢らせて下せぇ!!」

「悪いな」

「おーい、ねーちゃん!!もう二つ追加ねー!!」


騎士を見るなり奢る、良く見る風景である


「噂は聞きましたよ、スラムに炊き出しをするとかって」

「飯を食わせて腹を満たして犯罪を抑制すると言う話だ」

「そう、上手く行く話なんですかねぇ・・・」

「上手く行くかは分からんがやってみる価値は有るだろうと言う話だ」

「そうですか?」

「炊き出しにかかるコストはスラム浄化の為の予算と比較して大した事無い額だからな

暫く炊き出しをして犯罪率の変化とかを見ると言っているぞ?」

「そんなんで良いんですかね?」

「炊き出しをした際の変化を詳しく知る為に炊き出しは聖女様自らが行うそうだ」

「なんと!?」

「予算削減の為に自ら出向くなんて今までの領主様達じゃ考えられない事だ

我々は稀代の名領主の元で生活しているのかもしれない」

「ほへー・・・」


そうこうしている間に人数分の酒が運ばれて来た


「お、来た来た、じゃ我らが聖女様に」

「「「「「乾杯!!」」」」」


そう言いながら親父達と騎士達は乾杯をした

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