第29話【聖女の答え】

「価値が有る・・・と?」

「当たり前でしょう!?

私達が魔王を討ち取るまでに一体どれだけの犠牲が出た!?

私達のパーティとは別に編成された義勇軍や楽師のカーリダーサ!!忘れた訳じゃ」

「勿論覚えているよ!!」


絶叫するグレートヒェン、その眼はやや潤んでいる


「今有る世界は彼等が目指して、私達が望んだ平和な世界なんだよ?

その世界を意味が無いと?」

「・・・・・・・・・・」

「私は聖女とか言われているけども暇に押しつぶされてグダグダ憂鬱になったり

退屈しのぎに悪党を叩き潰して回るような如何しようも無い女だよ

だけど私はこの世界を価値有る物だと思う」

「ファウストが居ないのに?」

「確かに彼が居ない世界は退屈だよ、それはここに来て実感出来た

彼が居たから魔王討伐も苦では無かったと思えるよ

だけどファウストが居なくなったからって全部投げやりにはならないよ!!」

「私だって騎士としての忠義は捨てたけども騎士として有るべき姿と言うのは捨てた覚えは無い!!

約束しよう!!私は事情が無い限り世界を壊したり、無辜の民に危害を加えない!!」


剣を掲げ、騎士として誓いを立てるグレートヒェン


「・・・・・嘘を吐いた君を信じろと?」

「それに関しては申し訳無い、しかし繰り返しになるけど

それを渡さないと言うのならば私は君を殺す」

「・・・殺してみろ、と言えたらカッコ良いんだろうな」


足をグレートヒェンに渡すゾルゲ


「ありがとう」

「脅した癖に何を言うか・・・

言っておくけど世界を乱そうと言う事になれば

その時はスクラッチ辺り誘って追いかけて殺しに行くからな」

「あの腐れ外道と?」

「あの腕だけは良い腐れ外道と、一人じゃ如何やったって勝てそうに無いからね」

「・・・アイツも何時か襲って来そうだな」

「何?」

「何でもない、じゃあ私はもう行くよ」

「あぁ・・・気を付けてね」

「じゃあね」


グレートヒェンは廃教会の外に出て行った


『殺しておかなくて良いのか?後々の障害になりかねないぞ?』


グレートヒェンの中のファウストの頭が囁く


「良いよ」

『何故だ?』

「だって仲間じゃない」

『・・・グレートヒェン、君のその中途半端さは何時か君を殺すかもしれない

君は何がしたいんだ』

「君を生き返らせて共に生きたいんだよ」

『もっと真剣に願うべきだ』

「真剣だよ」

『果たしてそうだろうか、他の全てを諦めてでも

やるべき事では無いのかな?』

「馬鹿言わないでよ、君以外の全てを諦めたら私は生きているって言えるの?それ」

『判断は君に任せるよ』

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