第24話【聖女の倦怠】

「はぁ~・・・」


大聖城の自分の執務室で物鬱げに溜息をするゾルゲ


「何か違うなぁ・・・」


文字通り判を押す毎日から解放されたが

杖で人の頭を押し潰す日々になった、最初の内は刺激的だったが

飽きが来たのだ


「そもそも私、人を殺すの趣味じゃないし・・・

雑魚を何匹潰しても魔王討伐の頃の様な気持ちにはなれなかった・・・

ファウストが居てくれたらなぁ・・・」


魔王討伐の頃にはファウストが居た

彼はゾルゲの才を認め、共に戦い、魔王を倒した

魔王を倒した瞬間よりも魔王を倒す道程は楽しかった

勿論辛い目にも遭った事も有ったし死にそうな激戦や修羅場も多々有った

文字通り死んだ事も有ったが、その際には貴重品のエリクサーを使って蘇生させられ

正にファウストは命の恩人だった


「・・・良く考えたら魔王討伐なんて最悪の日々の筈なのに

何であの頃が懐かしいなんて思うんだろう」


決まっている、ファウストが居たからだ


「・・・・・これじゃまるで、私がファウストの事好きだった、みたいじゃないか」


一人で執務室で呟いても、何も変わらない


「そんな訳無いじゃないの、じゃあ何か

私は好きだった人が殺されるのを黙って見ている外道だとでも?」

「好きでも無いにせよ、命の恩人には変わりないけどね」

「うわぁ!!グレートヒェン!?何時からそこに!?」


ゾルゲの後ろにグレートヒェンが立っていた

その事に驚き椅子から転げ落ちるゾルゲ


「私よりはマシだよゾルゲ、私はファウストの事が好きだったのに

見殺しにしてしまったからね・・・」

「・・・仕方ないよ、スクラッチの奴が裏で動いていたんでしょう?

じゃあ無理だよ、止めに行ってもスクラッチに首を刎ねられておしまいだもの」

「・・・・・皆でファウストを助けに行ってたらさ、助けられたかな?」

「無理だよ、だってファウストが諦めてたんだもの」

「・・・そうね、でも・・・」


そこまで言ってグレートヒェンは口を紡ぐ


「でも?」

「・・・・・何でもない、じゃあ今日も視察行く?」

「そろそろ人を潰す日々にも飽きて来た頃だからねぇ・・・」

「潰される方からしたら溜まったもんじゃないけどね」

「そうだ、グレートヒェン、終わったら久々に御飯でも一緒に如何?」

「人を潰し終えた後に?」

「魔物を潰していた頃も御飯食べてたじゃない」

「あの頃は貴女が御飯作ってたわねぇ」

「他の皆料理出来なかったからねぇ・・・

料理作るのが好きだったかもしれない」

「料理人にでも転職したら?」

「考えておく」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る