第15話【聖女の仕事】

愚痴っている聖女ゾルゲだが仕事の方は順調その物である


「失礼します領主様」

「あぁ、ジマーン殿、今日も御疲れ様です」


彼女の執務室に入って来たのは

大聖城及びドナウエッシンゲンを守護する聖城騎士団団長ジマーン伯爵

剣の腕前もさることながら彼の政治手腕はゾルゲ以上であり

実質ドナウエッシンゲンを統治しているのは彼でありゾルゲは半ばお飾りである


「書類にハンコをお願いします」

「貴方の方でやってくれれば良いのに・・・」

「貴方は御領主様ですので、決定権は貴方にあります」

「まぁ貴方が決めてくれた事を許可するだけだしね、問題無いよ」


ジマーン伯爵が纏めた書類にハンコを押す日々

無味乾燥と言う言葉がこれほど似合う事も無いだろう

淡々と書類にハンコを押し続け、ある書類を見つけ手が止まる


「ジマーン殿、このスラム浄化予算って言うのは何です?」

「はっ、最近スラムでの悪童共の悪行が目に余りますので

スラムに対しての予算と人員を頂きたく存じます」

「悪童?」

「最近、スラムのストリートチルドレン達による窃盗被害が多くてですね」

「子供を躾けるのにこんなに予算が居るの?

貴族が博打で大負けしてもこんなに出費はしないと思うけど?」

「連中を侮るのは危険です、中でもジャベスと言う小僧は恐ろしく素早く

我が騎士団の追撃を躱す程の逸材です」

「子供に逃げられる騎士団とは一体・・・でもスラムに逃げられたって事でしょ?

スラムが迷路の様に入り組んでいると言うのは私も知っている

お金と人員出したからってその・・・ジェペス?」

「ジャベスです」

「そう、そいつを捕まえられるの?」

「確実とは言えませんが現状でも無理です」

「ただ人手を増やすだけじゃ不足ね、この書類は返すから見直して来て下さい」


書類をジマーンに渡すゾルゲ


「・・・・・は、申し訳在りません」


間を置いて書類を受け取るジマーン


「エルフとかさ、生き物の気配察知に長けた種族の積極的雇用とか如何だろう」

「は?・・・あ、スラム浄化案ですか?うーん如何でしょう、会議にかけてみます」

「よろしく頼むよ」


ゾルゲはそう言うと、ハンコを押す作業に戻った

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