第12話【脳内の物語】

「あい、分かった助けてやろう」

「え?」


先程迄の殺伐とした風景から一転、のどかな風景が眼前に広がった

暖かな日差しにテーブルと椅子、その上にティーセット

そしてファウスト、頭だけではなく在りし日の全身が揃った状態で

優雅に紅茶を飲んでいた


「・・・これは?」

「君の現状を分かり易くする為に会合を開いた

分かり易く言うならば脳内会議、と言う所か」

「はぁ・・・」

「君は危機感が足りない」

「え?っ!!」


ファウストは座りながらさも当然の様に何処からともなく剣を取り出し

グレートヒェンに突き付けた


「君さぁ、確かに君は勇者の仲間だ、そんじょそこらの奴には負けない

でも君だって殺されれば死ぬし?力を得ただけの子供とか言っていたが

それでも君を殺せる位の力量は有るし、君の現状は殺される一歩手前だ」


ファウストが指を鳴らすと、空間が四角く切り取られ

自身を押し倒している少年の姿が見える、物凄いスローだが自分に迫って来ている


「この脳内会議の外の現実ではとてつもなくゆっくり時間は動く

ゆっくりだが確実に時間は減っている、さぁ如何しよう?」

「如何しようって・・・振りほどく?」

「無理だろ、実質解こうとしてパニックになって私に助けを求めている状況じゃないのか?」

「えーっと・・・じゃあさっき言ってた、凄く速く動くって奴は?」

「押し倒される前なら兎も角押し倒された後じゃあ速くなっても意味が無いだろ?」

「じゃあ如何すれば良いのよ!!」

「それを考えるのが君の役目だ、しつこいが私は大抵の望みなら叶えられる、何かしら言って見ろ」

「・・・・・・・・・・」


グレートヒェンは考えた、この場を切り抜ける方法を


「・・・・・こういうのは如何?」

「それで行こう」

「いやまだ何も言っていないけど」

「君と融合しているんだから君の考えは読める」

「でも、ちょっとこれは・・・」

「下手な考え休むに似たり、後は勇者の仲間として戦った歴戦の勘で何とかして貰おう」

「い、良いの?」

「最初に思いついたその情動で全てを押し流せ、どの道時間はあまり無い」

「で、でも」

「準備は出来た、脳内会議を解くぞ、覚悟を決めろ

それから当然ながら回収するまで私の助力は見込めないからな

気を抜くな」

「・・・分かった、行くよ!!」


ここまで約一秒、そして現実が動き出す

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