第9話【彼女の物語】

愛馬ローズオーラを走らせるグレートヒェン

彼女は愛するファウストと共に人生を歩む為に彼の肉体を探す旅に出た

嘗て、彼と共に戦場を駆けた鎧装束に身を包んだその姿は

まさに戦乙女そのものだろう


「所でファウスト、君の言う通りに走らせているけどこっちで合ってるの?」

『質問に答えよう、一応頭部だからな、何処に体が有るのかは把握している』


ファウストの頭部は今グレートヒェンの体と一体化しており

彼女と会話が可能である、そして彼女の質問に答え何処に自分の体が有るのか

正確に察知し知らせてくれているのだ


「ふーん・・・不思議なんだけども王都には死体は無いの?

処刑場が有った王都に死体が無いのは変だと思うけど」

『質問に答えよう、王都に死体が有るのか定かでは無いが

今一番強く活動している死体は我々がこれから向かう場所に存在する』

「どういう事?」

『例えるならば右手を思い切りつねられている時に左手をくすぐられても

意識は右手に行く、と言う事だ』

「分かった様な分からない様な・・・」

『まぁ王都に死体が有るかもしれないと思って貰えれば良い

と言うか確実に有るだろうが、まず死体を確実に集めるのが先決だ』

「そうだね、ファウストの体はどうせ全部集めるんだから順番は如何でも良いよね」

『その通り』


そしてグレートヒェンはある寒村に辿り着いた


「寂れた村ね・・・!!」


彼女は馬から降りて剣と盾を構えた


『如何した?』

「人の、強い血の匂いがする」

『ふむ、如何やら死体の持ち主が暴れた後の様だな』

「・・・・・」


手に力が入り、気分が高揚する

この状況はまさにファウストと仲間達と魔物達と戦っていた状況そのままである何処に居るのかな


「さて・・・仕手人は何処に居るのかな」

『そこの三つ奥の家の中』

「・・・何故分かるの?」

『何処に体が有るのかは把握している、とさっき言っただろう

ここまで近付けば正確な位置は分かる』

「便利ね」

『大抵の望みなら叶えられると言っただろう』


軽く笑って、グレートヒェンは言われた家の扉を蹴破った

そこには旨そうに人を喰らっている少年が居た

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