第5話【勇者の提案】
「ならば君の体に私を入れれば良い
それならば君と共に生きる、と言う事になるだろう?」
「・・・・・・・・・・違うわ」
グレートヒェンは逡巡の後にはっきりと否定した
「何がだ?」
「貴方と、一緒って言うのは心惹かれるけど
体の中に入れて、それで貴方が生きられるって事でしょ?」
「その通りだ」
「人頼りで生きる事を生きるとは言えない
それに貴方を抱きしめられない、私は貴方と共に生きて欲しいんだ」
「ならば、だ、為すべき事は一つだけだ」
「・・・何をしろと言うの?」
「集めるのだ、他の死体を」
「死体?」
「この勇者ファウストの死体だ、首から下全てを集め
そして君の強い想いが有るのならば勇者の復活も夢物語では無い」
「!!」
グレートヒェンの目が見開く
「但し、勇者ファウストの死体には外法が宿っている
そして外法ごと死体を取り込んだ者達が居るかもしれない
だが安心しろ、私が居る、私を取り込め
共にファウストの肉体を集めようでは無いか」
グレートヒェンが立ち上がる
「さぁ私と共に行こう、剣を取れ、魔王を倒す為では無く
君自身の願いの為に剣を振うんだ
こんな場所で泣いているのでは無く全てを斬り伏せて勇者を助けるんだ」
「自分の欲の為に?」
「その通りだ」
「そんなの・・・騎士のやる事じゃないよ」
「そうだな」
「君の体を持っている人・・・別に悪い人って決まっている訳じゃないんだよね?」
「道徳の教科書で言えば外法を使っているから悪だな」
「茶化さないで」
「失礼、そうだな、外法を宿した勇者の死体と一体になっているだけで
悪人か善人かでは測れない、でも善悪って何?君の願いよりも重い物なのか?」
「・・・・・」
「安心しろよ、君なら出来るさ」
「私は・・・国を守る騎士なんだ」
「気が付いていないのか?」
「え?」
「君、笑っているよ?」
グレートヒェンは鏡を見た、先の衝撃で罅割れているが
そこに移っていたのは今まで見た事の無い笑顔を浮かべている自身の姿
「・・・・・」
「さぁ行こう」
「・・・・・」
その日、女騎士グレートヒェンは自宅から姿を消した
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