第3話【勇者の爆発】
勇者の首を切り落とした
そして勇者の体が爆発した
起こった事を書き記すのならば二行で済むが
巻き込まれた方からすればもっと短く済む
地獄
爆発の衝撃で体が吹き飛んだ者はまだ幸運だろう
衝撃に吹き飛ばされた物が体に刺さった者は激痛の中で生を終えた
処刑場はまさに地獄絵図と化した
この騒動を収めるのに半月で済んだのは
処刑の際に負傷した父王の代わりに尽力した
ヴォルフガング第二王子の手腕による物だろう
父たるフォースタス王は処刑場で負った重傷が元で床に伏している
だが、悲劇はこれだけでは終わらなかったのである
寧ろ『勇者を殺した罪を償え』と天上の何某かからの裁きの如く
悍ましい物語が幕を開けるのである
勇者ファウストの処刑の日
王国騎士団長の地位を約束されている女騎士グレートヒェンは
豪奢な装飾のベッドの上で自身が思いを寄せていた勇者が死すのを悲しみ泣き腫らしていた
『騎士として王国に忠を尽くさなければならない
故に王国の決定に従わなければなならない』
等と言う理由で彼女は勇者が死ぬのを手をこまねいて
黙って、正確には泣いて
見守って、正確には泣いて
居るのではない
そも彼女は勇者が外法を使った時
仲間に『見なかった事にしよう』と提案した
国一番の槍の名手たるスクラッチは反故にしたが
その時、一人を除いて提案に賛同した
提案に賛同しなかった一人とは当事者たる勇者ファウストである
正確には賛同しなかったのでは無く
『え?私はもう魔王殺せたし死んでも良いけど?』
とどっちつかずの意見である
ファウストは己が捕らえられた時も大して抵抗せず
グレートヒェンに対しても『別に気にしないで』と気遣いの言葉をかけた
彼女が泣いているのは
『ファウストが生きる事を放棄している』と言う事に対してである
自分は為すべき事を成した
後は如何でも良いと言わんばかりの勇者の態度に深い哀しみを得ているのだ
その状態では助けても無意味である
彼女は泣いた、泣き続けた
そして勇者の首が切られて大爆発が起きた
彼女の部屋の窓ガラスが一斉に割れる
何事か、と彼女が外を見やると何かが飛んで来る
彼女はその何かを受け止めた
受け止めた物は勇者の頭部であった
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