第2話【勇者の処刑】

裁判の翌日、勇者は断頭台へと連れられた

民衆達が見守る中、勇者は平然と断頭台へ歩み寄る

警備の者はそんな勇者を黙って見守っていた


「・・・縄とか拘束とかしないのか?」

「引き千切ってしまう、幸い本人が乗り気だから良いのでは?」


警備達は勇者の歩みを見守るしか無かった

そして勇者は断頭台の元にやって来ると

さも当然の様に仰向けに横になった


「・・・勇者殿、向きが逆です」


処刑人執行人が勇者に指摘する


「良いじゃないか、自分の首を切り落とす刃を見ていたくはないか?」

「・・・お好きにどうぞ」


こんな罪人見た事が無いので処刑人も狼狽える


「勇者ファウストよ!!」

「あ、王様、巻きで行きましょ、貴方の話は何時も長くて辟易するんです」


立ち上がり老王の宣誓を長いからと省こうとする勇者

王は震え、怒りに歯を食いしばる

何故この男はこれから死ぬのに狼狽えぬ?命乞いをせぬ?

こんなにも堂々としていられるのだ!?

そう思いながらも、王の威厳を保つ為に堪え、座り

処刑を進めろと右手を挙げる


教誨師が勇者の元へ、末期の懺悔を聞きに来るもそれすら


「あ、特に無いです」


の一言で片付いた


民衆達も最初は勇者の処刑に対し多様な面持ちで見ていたが

今はただただ白けている


そりゃそうだ、壇上に上がった芸人が棒立ちならばこれ程白ける事は無い

そして勇者の断頭台が落とされ、彼の首が落ちた


だがしかし誰も何も思わなかったのだろうか?

彼は勇者であるが彼には外法が有る

彼の『中』には外法が有る、当然ながら普通の人間とは異なる

首を落として終わりにはなると何故思ったのだろうか?

彼の首を切り落として外法が外に飛び出るとは思わなかったのだろうか?


彼の肉体の中に留められていた外法、それは彼の死によって外へと解き放たれた

激流を食い止めていた大岩を砕くが如く

勇者の首を刎ね飛ばせば溢れて来るのは外法の激流


生き残った人々は口を揃えて言った


「勇者爆発した」

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