第34話 過去と現在と現実

 

 溶岩球が炎の壁へ放たれたー


 溶岩が炎を燃焼するとても気持ちの良い音が周囲にこだました。

 地面に夥しいほどの草が生える中、その溶岩によって枯れ落ち、ただの灰と化していく。


 燃焼し続ける溶岩が3人を取り囲み身を守る中、その溶岩に向かって対称的な水が降り注がれた。

 これもまた、3人に対する敵の攻撃の一部とうかがえる。


 溶岩と水が合間みあった瞬間、周囲半径50mを覆う白い水蒸気が舞い上がった。

 辺りは白一色。

 地にある灰となった草、上空の空、エルシャ、シュルツ、ジェームズ3人それぞれが仲間の顔ですらうかがうことも不可能な深い水蒸気に包まれた瞬間だった。

 3人は声を頼りに陣形を組んだ。3人が背中を三角形に囲むような陣形。

 この後、どこから来ても対応できるような、完璧な陣形だ。


 3人は下手に動くことはせず、物音と殺気だけを頼りに索敵を開始した。

 辺りに広がる白い水蒸気と天泣の音が重なる。


 3人の静寂が続いたー


「・・・・」


「・・・・」


「・・・・」


「恐怖心。それが今のお前らの感情だ」


「!!」


 陣形を取っていた3人の背後に現れた。

 僅かな三角形の隙間に現れたミイであった。


 エルシャとジェームズは瞬時に腕を火成岩と溶岩に変形させ、その拳をミイへ向け放つ。


 ところが、その火成岩と溶岩の腕も簡単に素手であるミイの手で簡単に止められてしまった。


 ミイはその火成岩と溶岩の腕を掴んだまま、


「まあ待て、話を・・・」


 シュルツは古剣を抜き、ミイへ刺しこむが、足払いで簡単に古剣が折れてしまった。

 折れた古剣の反動で前屈みとなったシュルツの懐に蹴りを加え、シュルツは10mほど飛ばされた。


 シュルツはすぐさま体制を整え、ミイへ視線を向けた。

 拳を掴まれたエルシャとジェームズが顔を歪めていた。

 それは、ミイの握力でエルシャとジェームスは地に膝をついた。


「だから話を聞けと言っている」

「これは命令ではない」

「頼みだ」



 * * *



 〈帝都・近郊の村〉


 現在に戻る。


 土砂降りの雨。

 地面が雨水で冠水。

 雨水に滲む血液。


 地に落ちた男女の遺体。


 エルシャ、シュルツ、ジェームズの3人だった。


 1人の女性、ミイは微かに意識はあるが、他3人は絶命。


 微かに息のある女性は腹部が抉り取られ横たわっている。

 吐血ー

 涙なのか!? 目先から溢れる水滴が女性の感情を表している。


 その傍らで立ち尽くしている男がー


 逆光で顔立ちがよく見えないが、血液の付いた刀剣を手に。

 明らかにこの男が4人をやったであろう。

 男はまだ微かに息のある女性に一瞥するとその場から立ち去った。


 激しい戦いを後に、自身の夢と信頼、強さの仲間を探していたミイは

 エルシャ、シュルツ、ジェームズはのちにミイの仲間となり、メラースを結成。


 現在に至るー



【NEXT】


※ 第16話 崩壊と宿痾をご参照ください。。


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