第33話 幾度も迫る炎

 

 辺りを飲み込む膨張音。

 三人の影が完全に炎の光によって消え去り、全てを飲み込もうとしていた。


「な、なんだー!!」


「熱い!!」


「やばいっ! 飲み込まれるぞ!!」


 辺り一面に広がる草が燃え始めた。


「ジェームズさん!!」

 エルシャは固まる二人を背に叫んだ!


 固まっていたジェームズは、現在に気を取り戻すと、腰に下げていたゴートスキン水筒を手に取り、水を口へ含んだ。


 すると、瞬く間に足先から順にジェームズの身体が液体化し始めた。

 後ろの背景が透けて見えるほどの透明感。

 環境適応能力の力だ。


 水性質に変貌を遂げた身体から、ジェームズは迫り来る炎の塊に向けて、自信をまとう水を放出した。


 無能。


 放出した水より炎の火力が強すぎて水は一瞬にして蒸発し、水蒸気となった。

 もう時間がない。

 ジェームズが次にとった行動は、自信の身体の水性質を極限まで厚みと範囲を増殖させ、エルシャとシュルツに覆いかぶさり、身を挺して包み込んだ。

 以前のミイとの戦いを再生したかのように、同じ現象が重なったように感じる。


 炎の塊が三人と衝突した瞬間、爆音が轟いた。

 草や地面が一瞬にして燃え盛り、辺り一面を白光が包み込んだー



 * * *



「・・・・・」


 数十秒間の静止。

 飛び散った火の粉が燃え尽きていない辺りの草に飛び散り、炎の楽園と化している。

 燃える音と抉られた地面のかけらが崩れる音だけだった。


「・・・・・」


 水の球体が姿。

 息を切らしながら、エルシャとシュルトは水の球体から這い出てきた。

 全身びしょ濡れ。

 数十秒間水中の中にいたため、酸素が恋しい。

 ジェームズも水性質の身体をゆっくりと元に戻し始めた。

 息を切らし、疲弊しているのが見てうかがえる。


「みんな大丈夫ですか?」


「ええ・・」


「誰だ一体・・」


 エルシャは反応した。

 再び危機が迫っていることを。


「みんな! ここから走って逃げましょう!!」

「もう一度来る」


 三人は頷くと、数百メートル先にある大森林へ走り始めたー

 長く伸びた草が邪魔をするが、懸命に走り始めた。


 このフィールドでは勝ち目がないと感じたエルシャは、自分たちが少しでも有利なフィールドに誘う必要がある。

 敵はこっちの位置を把握しているが、こちらは敵の位置を把握できていない。

 とにかく、この草むらは危ない。危険度が高すぎると判断したのだった。


 数十メートル走ったが、その逃げ先を見計らっているかのように、今度は広範囲に横幅30mほどの炎が、前後左右上五方向から一斉に襲ってきた。


 逃げ場も隙間もない。

 絶体絶命。


 エルシャは自身の身体全身を溶岩へと変貌させた。


「私がここを耐え凌ぎます。その瞬間二人は早く森林へ入って次の戦闘態勢へ移ってください」


 そう言い放つと、エルシャは溶岩を20mほどの大きな溶岩球へ形状変化させ、五方向へ放った。



【NEXT】

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