第32話 迫る炎

 

 悪魔であるものの準則 。

 黒や茶色を主体とした、暗めの印象の装備品に、金欠なため、まともな武器も購入しきれていない。

 一部錆びついた剣に鎧。

 ルーキーの剣士が身に纏いそうな貧弱な装備だ。

 シュルツは茶色の汚れたマントを羽織る程度の装備に、先端が錆びた古剣。

 ジェームズもモスグリーン色のマントを羽織る程度の装備に、先端が錆びた古剣

 エルシャは全身黒のレザースーツ。胸元が大胆に開いた服に、真っ赤な口紅。下ろしていた髪の毛を後ろで束ね、以前のエルシャと比べ、大人びた姿に変貌を遂げていた。

 エルシャだけ装備品に少しばかりの豪華さが見える。


 二人の男はどことなく、不機嫌な態度を感じられたが、この世界に広がるまだ見ぬ世界への挑戦へ向かった。



 * * *


 三人に襲いかかってくる猛獣を倒しながら旅を続けていた。


 辺り一面大草原。

 首の高さまで伸びている草。

 三人を覆い隠し、視界を塞ぐ。

 歩く地面は緑一色。空を見渡すと天泣。

 晴れているにもかかわらず、空は涙を垂らしていた。

 異様な天気にどことなく三人は嫌な雰囲気を覚えていた。

 だが、誰もそのことには触れない。


 三人の行動布陣はこうだ。


 先頭に危機察知能力のあるエルシャ。

 二列目に上下に加勢できるジェームズ。

 後尾にシュルツ。


 突然の戦闘に備えての布陣だ。


 左右上下視界が失われているこの地形では、常に気を張らないといけない。

 三人は周囲に気を配りながら進んでいた。

 すると、エルシャは突如静止したー

 左手を横へ突き出し、静止の合図。

 後ろにいる三人も静止した。


「・・・・」


「・・・・」


「・・・・」


 雨が滴り落ちる音。風音。草が靡く音ととは別に高速で草むらを動く音が、左右直角に動きながら、また、三人を撹乱させるように徐々に近づいてくるのをエルシャは察知した。


「・・・・」


 20秒ほどかけて三人からおよそ10mほどまで近づき、静止した。

 位置はエルシャから見て9時の方向。

 エルシャは後ろの三人に動きが静止した場所を知らせると、抜剣し戦闘の構えを見せる。

 緊張感が一瞬にしてました。

 ただ寄らぬ現場。固唾を飲んだ。


「・・・・・・・・・」


 草むらから顔を出したのはただの野生の鹿だった。

 鹿は三人を見つめると、すぐさま走って去っていった。


 三人が安堵した瞬間。

 急激に三人の影が失われた。

 照らす赤い光。熱い。ものすごい暑さだ。

 一瞬この近辺の気温が急激に上がったものと感じたが、

 真上を見た瞬間、三人は驚愕した。


 直径20mの巨大な炎の塊が迫ってきた。

 三人の頭上から迫ってきたのだ。


【NEXT】



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る