第26話 火成岩の像

 

 地に連なる火成岩に同化するようにジェームズは姿を消した。


 執事は何処と無く、目から涙が溢れた。

 自身を顧みず、執事とエルシャの盾となったジェームズに称賛。


 掌を叩く音が煙の奥から聞こえて来る。


「いいねー」

「仲間を守るその勇姿」

「感動」

「元々仲間とも思っていない男が身代わりに倒れるその姿」

「素晴らしー」


 いつの間にか、消え去っていた煙が再び立ち込めてきた。


 ミイが拍手をしながら煙から現れた。


 執事はその耳触りな拍手、言葉に苛立ちが増していた。

 執事の顔は怒りそのもの。

 鬼。


「パチッ パチッ パチッ パチッ・・・」


 ミイは拍手を途中でやめた。


 突如、ミイの脳裏に電気が走った。


 するとミイは、自身の右腕で左胸を貫いた。

 貫いとともに大量の血液が飛び散った。

 それだけでは終わらない。

 左胸を貫くとともに、自身の心臓を抜き取った。

 まだ、動き続ける生に心臓を右手で摑んだ。

 太く大きな血管がまだ繋がっている。


 繋がっている心臓を左手の手刀で断ち切った。


 貫かれ、心臓をもぎ取られるも動かせる左手が、その強さの証。


 ものすごいスピード、雑な投げ方でその心臓を執事のぶん投げた。

 執事は片手でそれを受け取ると、瞬時にして握りつぶした。


 ミイは左胸、口、鼻、から流れ出る血液に動じず、喋り始めた。


「なる・ほ・ど・・・」

「いい・・能力だ・・」

「だが・・まだ・まだ・だなぁ・・」


「この状況を理解して物を言うんだな!」

「お前の心臓を握り潰した」


「・・・・」


 執事はミイの足先から、頭までパンした。


「まあ、心臓を握り潰してまでも喋り続けるその異常さ

「こんな事で死んでくれるとは思っていなかったが・・」


「なら・・こ・これから・・どうする・・?」


「もしもの為、ここへ来るまでに少し考え事をしていた」

「あの攻撃であなたを殺せなかった場合、どうやったら倒せるのか」

「今は実験段階です」

「心臓を握り潰してもまだ生きている」

「だが、多少のダメージはあると見て取れる」

「そして、次の実験」

「今あなたの周囲に舞う煙は猛毒のガスだ」


 ミイは周囲を確認。


「それも効いているようには見えない」

「光線も身体的外傷も毒も」

「そうなれば、あなたを永遠に封印するしかないと」


 ミイの真下の地面が少し盛り上がった。

 すると、瞬時に火成岩の腕がミイの両足を掴んだ。


「いくらあなたでも、心臓を潰され直ぐに動くことなどできないでしょう」


 掴まれた足が徐々に火成岩におかされていく。


 地中から飛び出てきたのはジェームズだった。


 ミイは顔色一つ変えない。


「・・・・」

「そう言うこと・・・だったか」

「まさに・・・主演男優賞・もの・・だ」


「騙したことはお詫びします」

「ただ、これも戦いなので」


「・・・・」


「今からあなたの身体は火成岩の像になります」

「もちろん中身も」

「身体の臓器、脳、骨、全てを火成岩に変えます」


「触れた物も全て私の一部」

「今触れたあなたの身体も私の一部」


「お前は洞察力に・・長けている・か」

「かんぺき・・だ」


「あなたが何を言おうと、あなたの負けです」


 ミイの身体は火成岩の象となった。



 《シュルツ プロフィール》

 マーク・シュルツ(元執事)(25)

 所属ラン集:なし

 役割:執事(一般鬼)

 能力:エレンホス・・・能力:支配

 座右の銘:主人の名のもとに



【NEXT】


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