第27話 悪魔の復活

 

 ミイが火成岩の像となって3時間ほどのスパンが空いた。

 雨はすっかり止み、雨雲から差し込む光が、3人を可憐に照らしている。

 まるで勝利の施しのように。


 横わるエルシャの横に、火成岩の身体から戻ったジェームズ。

 エルシャを心配そうに見つめるシュルツが、腰をおろしていた。


 静寂な空間の中、ジェームズが口を開いた。


「これからどうするよ!?」

「家も財産も跡形もないぞ」


「これからの事はこれから考えればいい」

「今は生きていることに感謝しましょう」


「まっそれもありか」


 2人の会話には笑顔が見られ、楽しげな雰囲気が周囲を包んだ。


「まあでも、ここを離れるのは先決かと思われます」


「確かに、こんな気分の悪いところに居たくもないしな」


 シュルツはエルシャを抱きかかえ、3人はこの場を離れていった。


 その道中、ジェームスは隠していた力について何度もしつこく聞いて来るのであった。



 * * *



 翌日ー


 辺り火成岩を多く地に、多くの人だかりが


 突如と発生した火成岩に、前日に発せられた光線で周辺の村などが壊滅的な被害を追ったため、調査隊が組まれ、現地に運ばれたのだ。


 見ればわかるように、火成岩の発生源とも言える、高さ10mに積まれた火成岩の山の周りに、馬に跨った武装した集団や、白衣を着た研究者が調査しているのが窺える。


「なぜこの平地に火成岩が発生したのか理解できぬ」

「火山地帯でもないこの土地に、溶岩が発生したと言うことなる」


 武装した兵士と研究者が話していると、1人の歩兵が割り込むように発した。


「こちらに変なものが・・」


 武装した兵士と研究者が歩兵が言う場所へ向かうと、そこには火成岩の像。


「これは何でしょう?」


「うー 女性でしょうか・・・?」

「調べる価値はありますねー」


「よし! この像を城へ運べ!」


 歩兵たちは集まって、火成岩の像を馬車へ運び、馬車を発車させた


 木製の馬車に横わる像ー



 * * *


 城からそう遠くない距離に位置するとある国。

 闇の裏社会と精通する国と密かに言われていた。


 研究室ー


 いくつもの機器が立て並ぶ近代的なこの部屋には、実験隊とされて来た人間や、動物が隔離されていた。

 この国の裏の悪がみえる。


 上級兵士と研究者が対話。


「どうだ? 現地の状況は解明出来そうか?」


「うー 少しばかりお時間を下さい。不可解なことが起きていますから」


「わかり次第、すぐさま知らせるように。国の財産になるかも知れんからな」


 と、言っておきながら、財産とは裏で働く悪の力のことである。

 裏社会で働く非人道的な行いを公言にしないようにしているだけ。

 そんな事は研究者、上級兵士の中では有名な話である。

 一般市民には口が裂けても言えない話だ。

 何せ、不要とも言える一般市民を実験体として使用しているのだから。

 職を失ったもの、戦いによって使い物にならない兵士。

 この国から消えて言い訳できる、ある程度の理由がある者にターゲットを絞り、巧みな話術で国へ誘うと共に、実験体として招きいれるという姑息な行い。


 まだ、この話が噂話だと信じている若者もこの研究室で働いている。

 あどけなさが残る18歳の男性ロヘアもその1人だ。



《ロヘア プロフィール》

 ダビド・ロヘア(研究員)(18)

 所属ラン集:なし

 役割:研究者

 能力:不明

 座右の銘:新たな発見を



 火成岩の像がこの国の研究室に運ばれて、1週間ほど経過していた頃、ロヘアは毎日像を見かけるたびにある違和感を感じていた。

 ロヘアは、像から微かに感じる生命の働きが感じ取れたと言うのだ。

 

 毎日毎日苦しそうなその表情。

 実際に聞こえてきたわけではないが、声が聞こえる。


 像を見つめる若いロヘア。



 * * *


 深夜ー

 国中が寝静まる時間帯。


 研究室の自動ドアが開いた。


 ロヘアが、気になる像に忍び寄った。

 

 円柱の強化ガラスに入った像は、いかにも展示品のように、足元から照明がたかれ厳重に保管されていた。 

 ガラス越しに、像の顔と自身の顔をガラス越しに合わした。

 やはり、生命を感じるこの像には何かがあると感じ取っていた。


 スライド式に開くその円柱の強化ガラスをボタン一つで開けた。


 まず、ロヘアが始めたのは、像の身体を隅々まで確認した。

 特に気にかかる部分はなく、次に首にかけていた聴診器を像の胸の辺りにあてた。


「・・・・ドクンッ ドクンッ」


 ロヘアは目を見開いた。


「やっぱりだ!」

「どうやってかはわからないが、この像は生きている」


 ロヘアは、生きていると確証を得た像を助けようと

 頭をフル回転させたが、像をかち割る他、考えられなかった。


 近くにあった槌で慎重に端の方から叩いていった。

 少しずつヒビ割れが発生し、姿が見えて来た。

 綺麗な顔立ちに、綺麗な飛膜。

 数日前に戦いで負った傷跡など微塵もない。

 ミイは静かに眠っていた。


 ロヘアは見惚れていた。

 明らかに人間ではないその姿に、一瞬にして惚れ込んだ。


「美しい・・・」


 ロヘアは前のめりになって、ミイの顔を覗き込んだー


 息の詰まる瞬間だ。


「・・・・」


 ミイは瞼を開いた。

 すると、瞬時に覗き込むロヘアを確認すると、首を掴んだ。


「・・・・」


「や、やめてくれ・・・」


「・・・・」



【NEXT】


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